アボガドとお刺身のサラダ たっぷりクレソンのっけ

barmariko2006-07-09


最近すっかりはまっているのが、アボガドとお刺身のサラダにたっぷりのクレソンを添えたもの。個人的にはアボガドとサーモンの組み合わせがいたく気に入っている。そしてクレソン。彼はなくてはならない超主役級の役割を果たす。口の中にほんのり残る苦味が、アボガドのねっとりした甘さにドンピシャなのである。レタスでもルッコラでもなく、ここはクレソンでなくてはならない。

そもそも、イタリアから帰国したばかりの頃、「ニッポンのお刺身をイタリア風に食べたいなぁ」と純粋に思ったのがきっかけ。いわゆるマヨネーズソースのカルパッチョでは斬新さがないし、刺身だけというよりは野菜もバリバリ食べられるレシピがあったら・・・

よく居酒屋で”アボガドとマグロのサラダ”なるものを見かける。味付けはマヨネーズ系が多いようだが、わたくしは絶対絶対、ワサビ醤油派である。アボガドの濃厚な味を活かすためには、サラリとしたソースのほうが良いと思うのだ。さらにそこへオリーブオイルをたらすだけで、日伊合作の一皿が出来上がる。

アボガドとお刺身のサラダ たっぷりクレソンのっけ(4人分)
材料:アボガド1個、お刺身適量(お勧めはサーモン!)、クレソン1束、玉ねぎスライス適量、ワサビ、醤油、オリーブオイル、塩

  1. アボガドとお刺身を一口サイズに切ってお皿に盛り付ける。
  2. ワサビ醤油をまわしかける。
  3. 玉ねぎスライス、クレソンを上にのせる。
  4. 塩少々をふり、オリーブオイルをまわしかけたら出来上がり。

手順2以降は食べる直前に!(お刺身やアボガドの色が変わってしまうので)

え、こんなに!?と思うくらいクレソンはたっぷりのせよう。食べる直前によく混ぜ合わせることによって、どうせしんなりとカサが減るのだから心配無用。玉ねぎスライスも忘れずに。玉ねぎのピリピリ感はクレソンの苦味によく合うのだ。

しかし。問題がある。このわたくしの愛する一皿は、イタリアでは決して実現しないのである。サーモンのお刺身?どこで手に入れるんだ。クレソン?少なくともペルージャには存在しない。わたくしは無類のルッコラ好きだが、この一皿ばかりはクレソンの代用をお願いするわけにはいかない。ユーロスター(イタリアの特急列車)に乗って国際都市ミラノへ行けば見つかるかもしれないが、とにかくそれくらい難しい話なのである。ニッポンにいることを幸せに思わなければならない、と感じる数少ない瞬間である。
あ、これ白ワイン必須ですよ。

イタリアブログで覗くローマのキッチン

写真がとっても素敵なローマ在住イタリアジン女性のブログ「イル・カボレット・ブリュッセル」をご紹介。レシピも素晴らしく美味しそうなのだが、それより何より写真公開してくれた彼女のキッチンに目が釘付けである。うう、イヴァナのキッチンもそうだが、こういうゴチャゴチャ感のある楽しい空間(とはいえ不思議なくらいに片付いている)には、何と温かみがあることか。不ぞろいなタイル張りの棚も、ちょっと背を伸ばせばゴツンと頭をぶつけてしまいそうな食器棚も、決してわたくしには真似することのできない芸術品である。

少し引用してみよう。


さあ、これがわたしのキッチン。細長くて狭くて、正直十分とは言えない、いえむしろ小さすぎ?でも凄いのは、この狭さで、全てのキッチン雑貨の置き場所がちゃんとあるってこと。このキッチンは小さな角っこや、小さな棚、それから引き出しで溢れてるから、全てのモノを大切にしまっておけるのよ。
・・・<省略>
さて2番目の棚はパスタ用。どちらかというと小さなボウルや小鉢を置くための棚にも見えるけど、まあともかく見てみて。左から順に「PICI(ピチ:シエナ産)」「FREGOLA(フレゴラ:サルデーニャ産)」「MACCHERONI(マッケローニ:カラブリア産)」「STRANGOZZI(ストランゴッツィ:ウンブリア産)」「SAGNE(サーニェ:プーリア産)」
わたしがまだ買ったことのないパスタを知っている人がいたら、どうか教えて。
(−イル・カボレット・ブリュッセルより抜粋)

す、すごい。パスタマニアの域である。

嫌いな客

I CLIENTI CHE NON MI PIACCIONO AL BAR ALBERTO

バール・アルベルトで働くとき鬱陶しくてたまらないもの。それは、こちらが作る飲み物の「量」に対してイチャモンをつける客。例えば食後酒アマーロ。1杯の量がそれほど多くないため(もともと 食後に消化をよくするためのお酒であるから少量で当然である)、普通は小さめの専用グラスを使用する。見栄えが良くなるだけでなく、この専用グラスには指定量のところに線が入っていたりするものが多い為、注ぎやすくて便利なのである。つまり。この線まで注げば誰がどうみても適量なわけだ。

にも関らず、バール・アルベルトの、一部の教養のない客たちは、わたくしがピッタリ線まで注ぐのを見るやいなや「オーイ、この量はないだろう。ここはミラノのお洒落なバーじゃないんだぞ。ガリバルディ通りのアルベルトの店だ。お上品にやってる場合じゃないんだぞ」と文句を言い出す。「アルベルトにこの線までって言われてるから。」「それは常連には当てはまらないんだよ」「ちなみにわたしが夜働いているパブでも、この線までだけど」「それは夜だからだろ?」「とにかく。あたしが怒られるのよ。文句があるならアルベルトに言って」「ケチケチすんなよ、固いこと言うな。ここはニッポンじゃなくてイタリアなんだから!」

うざすぎる。この手で1滴でも多く酒を飲もうとする人間にロクな奴はいないのだ。そういう奴に限って支払いが溜まっていたり、アルベルトの弱い頭を狙って会計をごまかそうとしたりするのだ。そもそも、自ら量を増やせと言ってくる図々しい奴には、1滴でも与えたくなくなる、というのが人間である。

ある日隣のタバコ屋シモーネとそんな話で盛り上がった。「毎日来てるんだから安くしろとか多めに入れろとか、そういう主張は絶対おかしいよ。良い常連だったらさ、恩着せがましくサービスを要求したりしないよね。」とわたくしが切り出すと、「そういう風に強要されたら、ムカツクよな。」とシモーネも賛同する。「常識ある態度でいてくれたら、こっちからサービスしたくなるもん。シモーネだって毎日来てくれてるけど、わたしに一度も”もっと注げ”とか言ったことないでしょ?」「俺はさ、量が少ない多いよりもさ、アルベルトやマリコに会いに来てるわけだからな。まあ結果的にいろいろサービスしてくれてるみたいで、それはそれで有難いけどな。」「信頼関係ができるとそういうサービスに結びつくんだよ」チェーン店ではなく地域密着のバールであるから、余計その図式が成り立つのである。

ちなみにニッポンだったら・・・どんな店へ行っても、たとえ「あれ?これ量少ない!」と思ったとしても、それは心の叫びで終わるだろう。カウンターへ行って「これ、少ないです。もう少し入れてください」と直談判するニッポンジンはなかなかいない。量についてあれこれ言うのは恥ずかしい、と思ってしまうのがニッポンジン的なのかもしれない。

ニッポンでお行儀のよいお客様に慣れてしまったわたくしにとって、バール・アルベルトのカウンターで繰り返される「もっと入れろよ」の一言、いや彼らの存在そのものがわたくしを悩ませるストレスだった。

バール・アルベルトのおつまみ

どんなに暑い夏でも、午後5時ともなって少し涼しい風が出てくると、イタリアのバールには食前酒を求めて客がやってくる。この食前酒タイムがわたくしは大好きで・・・いや大好きなはずなのだが、バール・アルベルトで働く午後5時は嫌いである。何故ならストゥッツィキーニ(おつまみ)が全く用意されておらず、バリスタとして恥ずかしい思いでもって接客しなくてはならないからである。

普通はどのバールにも食前酒タイムともなると、ちょっとしたおつまみがカウンターに並ぶもの。(写真下)キッチンのないバールも多いのだが、ポテトチップやナッツ、オリーブなど、乾き物系やスナックでも構わない。大事なのは、必ずちょこっとしたつまみが食前酒には添えられる、ということなのだ)


通常バールやパブはこのつまみを、郊外にある飲食店向きの総合問屋で購入する。ここは一般客の利用は不可で、飲食店に与えられたIDカードを持っている者だけが入店できる仕組みになっている。会計はその都度行うのだが、年度末にはカードごとに1年分の税金が計上されるらしく、それなりに便利なようである。わたくしは以前街のバールやオステリアで和食ディナーを企画したとき、買出しのためオーナーに連れられて入店したことがあるのだが、なかなか面白い場所である。食材だけでなく、無限にあるグラスや食器、チャイニーズレストラン用の箸も揃っている。食器洗浄機などの機器類、テーブルクロスやナフキン、トイレ用品・・・飲食店に必要なものなら何でもあるのだ。

ミラノのスタイリッシュなバールならともかく、ペルージャのような田舎では小道具に個性を出そうとする店主は少ない。とりあえず機能すれば、安ければ、ということで、殆どの店主はこういった問屋を利用する。従って街中のバールが似たり寄ったりの趣になるのであろう。

話がそれたが、ずぼらなアルベルトはつまみの買出しすらまともに出来ない。「要買出し!ポテトチップ、ナッツ、オリーブ」等とわたくしは嫌味なくらいにメモを残して、レジにペタっと貼っておくのだが、効果を成したことはない。結局午後5時がやってきて、食前酒を飲む客に「何だよアルベルト、またつまみが何にもないのかよ〜」「ポテチはもういいよ。オリーブとかさぁ、何かないの?」と苦情を言われて初めていろんな角度から答える。「マンマの具合が悪くてね、病院へ連れていったもんだから。」「暑くてどうも体がだるいんだ」「いや〜忘れてたよ。そういえばそうだったな」(わたくしが100回言っても覚えない)面倒くさいことは、極力脳に刻み込まない主義なのである。

挙句の果てに客に言われて渋々近くのスーパーCONADにナッツ類を買いに走るアルベルトを見かける。CONADで買うのと、問屋で買うのと、正直値段は5倍くらい違うのに、何も考えず目先の問題解決だけに走る典型的なヤツである。アルベルトのマンマも彼に輪をかけて凄まじい。わたくしがひとりで店番をしていると「チャオ、シニョリーナ。何か足りないものはない?今から買い物へ行くからついでがあったら言ってちょうだい」

「マンマ、いっぱい足りないよ!ナッツもポテチも、おつまみ系がゼロだよ!あとね、ウイスキーがない。ジョニー・ウオーカーしかないし。マルティニ・ビアンコももうすぐなくなるな、それから・・・」わたくしは少しでも息子の非業をマンマに訴えようと試みる。しかし。「あら、その辺はアルベルトが管理してるからいいのよ。あなたは気にしないで。他の仕事に専念してちょうだい」専念できるか、おい。恥ずかしい思いをするのはわたしだぞ。ニッポンジンとしては発注ミス、在庫なし、など機会損失を招く事態は有り得ないのだ。
無能な息子を認めない、イタリアの典型的なマンマ像ここにあり。

トーマス家の”和”コーナー

barmariko2006-06-18


拝啓トーマス&イヴァナ。アナタ方は何故そんなにスゴイのですか。ニッポンの文化や料理に興味を持ち、日本酒にはまり、買い足し買い足しで集めたオチョコはこの通り。おまけにイヴァナ、家具作家であるアナタは、何と大好きなオチョコを飾るためのコーナーまで手作りしてしまいましたね。トーマスはソムリエですし、アナタ方の家のワイン貯蔵庫に1000本のワインが眠っているのは理解しましょう。しかしいつお邪魔しても日本酒と焼酎があるのは、スゴすぎます。永遠にアナタ方がわたくしのお友達でいてくれますように。

洗濯物がゆらゆら

barmariko2006-06-17


わたくしが持っているイタリアのイメージのひとつに、”窓越しに揺れる洗濯物”がある。ナポリの下町、ローマのトラステヴェレ地区(写真右)、そしてもちろん古の街ペルージャでも、ゆらゆら風になびく洗濯物は圧巻。今でこそすっかり慣れてしまったが、イタリアへ来たばかりの頃は「おお、これぞイタリア!」と感動したものである。

下左の写真は、ペルージャのチェントロ近くの裏通り”ヴィア・デラ・ヴィオラ(すみれ通り)”。美しい名前とは程遠く、お世辞にも治安がよいとは言えない地区だ。道には常識のない飼い主がほったらかしにした犬猫の糞尿が垂れ流しとなり、ボロボロのパラッツォ(建物)の壁は今にも崩れそうである。さて、遠方(正面)には窓から吊るされたジーパンが見える。この辺りの家にはベランダがない。その代わりに大抵の窓枠の外には紐が付いている。住人たちは、下着やシャツやパンツを紐にかけ、パチンパチンと洗濯バサミで抑えて乾かすのである。

一方、下右の写真はちょっと進化した洗濯物スペース。窓枠の下に設置されているのは、紐ではなくアルミ製の物干しラックである。イタリアではこのような簡易物干しラックがよく使われているのだ。ちなみに窓の真下はこのパラッツォの入り口であり、訪れる人は皆ここでチャイムを鳴らす。ふと上を見上げれば洗濯物がそよそよ・・・となるわけだが、そんなことはお構いなし。

イタリアの街を歩いていると、上からポタポタ滴り落ちる水に出くわすことがある。雨ではない。そう、洗濯物の水である。ちなみにイタリアの街角では、うっかり洗濯物が落ちている、なんてことは日常茶飯事である。しかもニッポンのように美しく清掃された道路に落ちるのではない。いつかお話したように、犬の糞で大盛況の恐ろしく汚い道に落ちるのである。わたくしのある不幸な友達は・・・やめておこう。皆様のご想像の通りの結末である。

謎の日本人(元)サッカー選手

ペルージャ外国人大学の真裏にあったわたくしの家。以前にもお話したことがあるのだが、3つの個室、バスルーム、キッチンというこじんまりした間取りである。3つの個室は1つがわたくし用、もう1つが友人のロセッラ(イタリアジン)用、そして残りの1つを短期で留学生に貸していた。

今から2年半前、この部屋にやってきたのがメキシコ人女性2人組アナとアイダ。2人とも超イケイケの19歳で、しかもお金持ち。高校の卒業旅行代わりに、両親からイタリア留学1年分をプレゼントされてやってきたのである。留学とは名ばかりで、一応学校に籍は置いていたものの、19歳青春真っ只中のラテン娘たちが勉学に励むわけもなく、毎日毎日朝まで飲んでは踊る、フェスタ続きの生活だった。

彼女たちの母国語はスペイン語である。つまり、スペイン語に類似したイタリア語を学ぶ、なんてことは遊びながらでも十分可能なわけである。学校へは全く行かないため、細かい文法や綴りはいい加減だったが、それでもあっと言う間にイタリア語を理解するようになっていた。我々アジア人にとっては羨ましい限りである。

ある日曜日。イタリアサッカーセリエAの「ユベントス」がペルージャへやってきた。サッカー好きというよりは代表選手デル・ピエロの熱狂的ファンだったアイダは、「絶対試合を観にいってサインもらってくる!」と朝から勢い込んでいた。いつもは朝まで飲んでいるくせに、その日だけは朝から気合の入った凄まじい化粧で、ギャアギャア騒ぎながら出かけて行ったのである。

若さってすごい。彼女達は見事に(本人曰く”ツテ”を利用して)ユベントスチームに近づき、そしてデル・ピエロに会い、サインだけでなく一緒に写真まで撮ってきたのである。「ひゃぁ。さすがにこれはスゴイわ。個人的にはデル・ピエロ嫌いだけどさ、こんなスター選手とよく写真とれたねぇ。スゴイスゴイ。」とわたくしが言うと彼女たちは得意げにこう答える。「でしょ?実はね、前日にいつものディスコへ行ったらね、ある重要人物に出会ったのよ。その彼が会わせてくれたの、デル・ピエロと。しかもその彼、日本人だよ?マリコ、知らない?」「・・・知らない。誰それ?」

怪しいやつがいるではないか。夜中にペルージャのチェントロにあるディスコへ繰り出す、謎の日本人。ユベントスデル・ピエロに我が家のうら若きメキシコガールズを会わせてやるという、スケールの大きいサービス。誰なんだ、そいつは?

「知らないよ〜。名前は何ていうの?」「ケンジ!」むむ、意外と普通の名前。「すっごい紳士的でさぁ、昨日はディスコでカクテル奢ってくれたし、今日も試合の後にアイス奢ってくれた。イタリア語もペラペラだよ、ケンジは。」「昔はセリエAの選手だったんだって。でもケガで殆ど試合に出られなくてそのまま引退しちゃったって。」「今は選手の代理人とかマネージャーとかやってるって。通訳もやるし、ニッポンジンの有力選手を探してくる仕事もしてるんだって。」「結構格好いいよね。ていうか何か日本人ぽくないよね〜」「デル・ピエロのこともよく知ってるって言ってた!スゴイよね〜」

ますます怪しい。彼女達の話によると、ケンジは中田よりも前にセリエAでプレーをしていたのだが、ケガが続いて名前は殆ど知られなかったようである。そのまま選手から裏方へと転向したという。彼女たちは続ける。「実は今夜ね、ペルージャチームの選手とご飯行くの!ケンジが誘ってくれて。でね、わたしたちのルームメイトはニッポンジンなんだよって言ったら、じゃぁ連れておいでよって。ねぇ、一緒に行こうよ!残念ながらユベントスじゃないけど、でもペルージャだってセリエAだしね。ご飯行って、多分その後は飲みにいくと思うよ。一緒に行こうよ!ケンジ紹介するから。」

「絶対ヤダ。行かない。皆で楽しんできて。」ケンジが誰なのか知りたい反面、サッカー選手と懇親会なんて怪しすぎる。そもそもサッカー選手たちのディナー&飲み会に、何故知り合いでもない金髪19歳のメキシコガールズたちがお呼ばれされるのか。それって間違いなくホステスのノリじゃないか。気づきなさい、ラテン娘たち。そんなところへノコノコ参加するなんて真っ平ごめんである。

それにしても誰なんだ、ケンジって。