卵サンドにモルタデッラを入れて何が悪い!

barmariko2006-07-12


モルタデッラとはとどのつまりイタリアのソーセージハム。ピスタチオ入りのものや黒胡椒入りのものなどがポピュラーで、イタリア人も大好きなハムである。中部イタリアの食の都ボローニャが発祥と言われ、今でも現地のトラットリアやリストランテでは、うず高く盛られたモルタデッラの一皿をこれでもかというくらい食すことができる。勿論もはやイタリア全土で食べられるが、やはりボローニャのそれは一味も二味も違う。

このモルタデッラ、実はニッポンでお馴染みの卵サンドに入れると超贅沢な美味しさなのだ。サンドイッチの具としてもはや右に出るものはいない、ゆで卵にマヨネーズの組み合わせ。この素朴な味わいに、ニッポンで食べれば高級な食材に入るであろうこのモルタデッラを惜し気もなく合わせる。その贅沢感にしばし酔いしれるわたくし。(←ていうか人間小さい)そしてこの感傷から一気に目覚める時がやってきたのである。

バール・アルベルトで以前、あまりにカラッポなパニーノのショーケースと店主アルベルトの脳みそにうんざりして、「あんたが仕入れをしないならあたしが作ってやるよ!」と一発奮起したことがあった。
パニーノ大作戦(前編)
パニーノ大作戦(中編)
パニーノ大作戦(やや後編)
パニーノ大作戦(後編)〜アンタにはうんざり!

その時作った数種類のパニーノの中に、ニッポンジンであるわたくしは当然ながらこの日伊合作、モルタデッラ入り卵サンドを入れた。ニッポンジン留学生も多いし、アメリカ人やらブラジル人やらとにかく外国人がいっぱいいるわけだから、問題なく受け入れられるだろうと思ったのだ。実際美味しいんだから、ともすれば流行るかも!?くらいに考えていた。

1人目:「美味い!」、2人目:「懐かしい!」、3人目:「美味い!」。そして4人目:「マンマ・ミーア!(何てことだ!)モルタデッラに卵を合わせるなんてキチガイ沙汰だ!」こんな発言をしやがった4人目の男こそ、バール・アルベルトの影の主、スーパーヘビー顧客である50歳イタリア人、フランチェスコ(写真)。

根はいい奴なのだが、アルベルトの親父の代から店に出入りしている為、少々態度がデカイ。職業は一応アンティークショップのオーナー。こう書くと聞こえがいいが、ショップというより5坪程のガラクタ倉庫である。掘り返すと戦中の誰のものか分からない葉書や白黒写真、学校の通信簿まで出てくる始末。店(倉庫?)は常に閉まっており、こう張り紙がされている。「入りたかったら、携帯にTELして。すぐ開けに来ます」まあ大体、100m先のバール・アルベルトで一日中暇を潰しているわけだから問題ない。

話を戻そう。フランチェスコはこう言った。「ただのモルタデッラ入りパニーノだと思ったから食べたんだ。なんてこった、卵を合わせるなんて!モルタデッラは重いんだ、豚の背脂が入っているんだから。そこに卵を入れるなんて、ありえない。重いものに重いものを合わせるのか??今日は胃が重くてきっと寝られないよ。」「あら、そう。でもアンタの前に3人のお客さんが食べてくれてね、みんな美味しいって言ってたよ。」「外国人だろ?」「一番最初に食べてくれたのは、シモーネのタバコ屋で働いているイタリア人の女の子だよ。ていうかさ、好みだよ、こんなの。」悔しくて反撃するわたくしも大人気なかったに違いない。

重い重いって、アンタすでに太りまくりじゃないか。モルタデッラと卵の組み合わせくらいでそれだけ神経質になるなら、毎日昼から飲んでる酒をちったぁ控えなさいよ。

その後やってきたのが隣町アッシジでワイン園を経営するアントニオ。古くからアルベルトの友人である。「マンマ・ミーア!なんてこった、今日は何が起こったんだい?ショーケースにパニーノが溢れてるよ。まいったな。」「作ったのよ、アルベルトが仕入れてくれないから。」「ブラバー!それじゃ1つ頂くよ。ツナ入りがいいな。」

笑顔で食べてそれで終わりかと思いきや・・・「美味しかったよ、ありがとう。ただ1ついいかな?このツナサンドに君はケッパーを入れただろう?これはやめたほうがいいかもしれないよ。」「何で?ツナにケッパーは王道でしょ?」「勿論そうさ。ただ組み合わせとしてはちょっと南部っぽいというか・・・南イタリアでは当たり前のようにこうやって食べるけどね、やはり中部以北では苦手と思う人もいるんだよ。ちょっとリスキーだから、やめたほうが無難じゃないか?」

あんたら、うるさいよ。