カフェ・フレッドとカフェ・シェケラート

barmariko2005-06-10

IL CAFFE' FREDDO E IL CAFFE' SHAKERATO

イタリアン・バールには一見冷たいカフェメニューがない。ニッポンやアメリカのように「アイスコーヒー」「アイス・カフェラッテ」「アイス・カプチーノ」「アイス・カフェモカ」などのメニューは普通存在しない。そもそも、カフェやミルクに氷を入れることがタブーなのだ。バールでそう注文すればやってくれるが、「味が薄くなる」という理由で怪訝な顔をされる。

じゃあ夏の蒸した暑い日には、バールで何を飲めばいいのか?勿論コーラやスプライト、ファンタ、アイスティー、各種ジュースなどはあるのだが、わたしはどうしてもカフェが飲みたい!ということは往々にしてあるだろう。あるのだ、冷たいカフェメニューが、イタリアにも。その名も「CAFFE' FREDDO(カフェ・フレッド)」と「CAFFE'SHAKERATO(カフェ・シェケラート)」。

前者のカフェ・フレッドというのはつまり、冷たいエスプレッソ、という意味である。しかし既に述べたように、イタリア人は彼らの永遠の飲み物であるカフェに氷を入れることは絶対認めない。かといって水出しできるようなインスタントタイプは許されない。それでは一体バールのカフェ・フレッドはどうやって作るのか。

バール・アルベルトでもバール・フランコ(id:barmariko:20050213)でも、夏の間は朝出勤すると同時にエスプレッソ・マシーンの3連もしくは5連の抽出口をフル稼動させて、一気に何杯ものカフェを淹れる。カフェがまだ熱いうちに砂糖をたっぷり加えて甘くし、それを空のワインボトルやペットボトル(勿論きれいに洗浄されたもの)もしくはピッチャーに移し変え、冷ます。常温になった時点で冷蔵庫に入れ、準備完了である。究極の手作り「カフェ・フレッド」だ。

このカフェ・フレッド、作り置きしておくと実はなかなか便利である。例えばバールにあえて「アイス・カフェ・ラテ」というメニューはない。イタリアでカフェ・ラテと言えばあくまでもホットなのである。とはいえさすがに暑くてバテそうな日など、非常に稀ではあるが「カフェ・ラテちょうだい。あ、でもミルクとエスプレッソは冷たいのを」などと言うイタリア人もいる。(例えばあの刺青職人のマッシモid:barmariko:20050525がそうだった)そんな時は冷たいミルクを入れたグラスに、あの作り置きした冷たいカフェをボトルからちょっと注ぐだけ、ものの5秒で完成する。
イタリアを旅行される際にバールの「アイス・コーヒーあります」という日本語や英語訳メニューを見て「おおおっ、アイスコーヒーだ。これにしよう」と安易に考えてはならない。ニッポンでお馴染み、ランチには必ず付いてくるあのアイスコーヒーは、存在しないのである。イタリアでアイス・コーヒーと言えば、エスプレッソをそのままの濃度でただ冷やしただけのものなので、ニッポンバージョンを想像しているとエラい目にあう。

さて後者のカフェ・シェケラートとはつまり、よく振った(シェイクした)エスプレッソ、という意味だ。作り方は簡単、1人前ならまずエスプレッソを1杯分淹れる。抽出している間に、バーテンダーがカクテルを作るときに使うあのシェーカーを用意し、砂糖スプーン1杯〜2杯、氷3つを入れ、そこに淹れたての熱いエスプレッソを加える。シェーカーに蓋をしてシャカシャカ縦振りし、適当なところでグラスに注ぐ。これがまた美味いのだ。氷によって急激に冷やされ、シェイクされるため、ブクブクとカフェの泡がたつ。もともと分量的にはエスプレッソ30cc分なのだから対したことないのだが、きれいに泡がたつ上にこれをシャンパングラスに注ぎ、上にコーヒー豆を飾ったりカカオの粉をふったりすると、お洒落な飲み物に大変身する。

ちなみに、通の飲み方がある。実はこれも客から教えてもらったのだが、カフェ・シェケラートに「クレマ・ディ・ウィスキー」をスプーン1杯加えたものである。シェイクするときに、この甘い甘いクリームウィスキーを加えるだけで(逆に砂糖は控えめにする)、ちょっと大人のグンと濃くのある深い味わいになるのだ。

物好きな方がいらっしゃったら是非お試しください。barmarikoの夏カフェ講座でした。