イタリア人のシャツ

barmariko2005-09-02

LA CAMICIA ITALIANA

たまのバカンスでせっかくペルージャへ戻ってきたのだから、まずはバール・フランコで美味しいカフェを飲みたい。バリスタのジュセッペにも会いたいし。おっと、オーナーのフランコさんはわたくしの家のオーナーでもあったのだから、一応挨拶したいし。そんなことより、そもそも昨年の夏、まさに今頃わたくしはバール・フランコでカフェを煎れる立場だった。時が流れるのは何て早いのだろう。わたくしが、あっちへ行ったりこっちへ行ったり、帰国して仕事を始めたり、忙しく環境を180度変えている間に、ここペルージャは・・・いつもと変わらず同じ空気が流れている。

そんなわけで親友のアンドレアと、バール・フランコで待ち合わせをし、カフェを飲むことにした。現れたアンドレアが着ていたシャツが写真上。わたくしは嬉しい。これぞイタリアーノなシャツである。ああ、ここはイタリア、という感じがする。ピンと張った襟も、その形も、ピンクとブルーの組み合わせも、派手なストライプも、ニッポンジンが着たら間違いなく浮くだろう。

そもそもイタリア人は、真夏でも頻繁に襟のあるシャツを着る。ポロシャツではなく、きれい系シャツである。夜遊びするときも、街をそぞろ歩きするときも、映画を観にいくときも、ディナーにお呼ばれしたときも、長袖のシャツを着るひとはとっても多い。そしてその裾はきちんとズボンに入れ、ベルトをしめる。ダラっと裾を外に出して着ることは稀である。

高温多湿のニッポンに比べ、イタリアは遥かにカラっとしているわけだから、それが成り立つのだろうが、以前スペイン人の女の子達がこう言っていた。「気候も風土もキャラクターも、スペイン人とイタリア人は本当によく似てるって言われるのに、ファッション・センスだけは全然追いつかないのよね、スペイン男はまだまだ田舎くさいのよ!ローマを歩く男性を見て御覧なさいよ、そりゃ全員がそうだとは言わないけど、靴とかシャツとか本当に気を使ってるひとが多いじゃない?やっぱりイタリア人は格段にお洒落よ、世間一般的に言うと。」そ、そうか?そりゃあんた、隣の柿は赤いってやつよ。シャツと靴に気は使うがマザコンで女好き、っていう男と、シャツと靴には全く興味がないが自立していて堅実なひととどっちがいいか?って聞かれたらわたくしは間違いなく後者である。

シャツと一口に言ってもそのバリエーションはさすが豊富だ。ちなみにシンプルな無地のものより、格子柄のタイプが断然人気である。昔初めてアンドレアから自宅でのディナーに招待されたときのことだ。もうひとりのニッポンジン女性Mikoさんとわたくしは、アンドレアが「トイレはここ、キッチンはここ、で、僕の部屋はここ・・・」というように家を案内してくれたとき、あまりに整然と片付いた彼の部屋を見て驚いた。隅に置かれた小さな洋服ダンスがふと目に付き、むしょうにその中を覗いてみたくなった。失礼を承知で(でもアンドレアなら許してくれるだろうという甘えで)、その扉を少しだけ開けてちらっと中を盗み見た。「・・・・。すごい」わたくしたち二人は顔を見合わせて・・・そして感動した。そこには格子柄やチェックのいかにもイタリア!なシャツがズラズラッと並んで掛かっていたのである。「す、すごい、タンスの中が超イタリア・・・」

話をバール・フランコに戻そう。わたくしはアンドレアにこう言った。「そのシャツ可愛いねぇ。でもニッポンジンには着こなせないかも(笑)」するとこう切り返すアンドレア。「ニッポンジンのシャツと言えば、クール・ビスの報道がイタリアでもされたんだけどさ。ニュースでその発表会見みたいなのを見たけど、あの小泉総理のシャツはイケてないよ。ありゃないよ。どうしたら、あんなシャツが作れるのか、それが知りたい。」「デザイン的にやばいってこと?」「そうだよ、濃いグレーのシャツでさ。ポケットと袖が白いんだよ、襟もだったかな?とにかくあの色がまずいね。もしかして小泉総理の髪の毛の色と合わせたのかもしれないけど、それは安易な考えだよなぁ。とにかくあれはスーパー不評だったよ、イタリアでは。」そうだったのか。それは・・・小泉総理に誰か伝えてあげてください。