サングリア・パーティ

barmariko2005-06-18

LA FESTA DI SANGRIA

イタリアに来て、何故かスペインの飲み物サングリアを口にする機会が増えた。ニッポンでもお馴染みサングリアとは、ワインに季節のフレッシュフルーツを漬け込んで砂糖を加えた、あの甘いフルーツワインである。何故ペルージャでサングリアを頻繁に飲むのかと言うと答えは簡単、バールやパブで何かしらフェスタがあると、気軽に作れるサングリアを店側が用意し、「サングリア1杯100円!」とか「女の子にはサングリアサービス!」等と打ち出すことが非常に多いのである。夏だろうが冬だろうがお構いなし、ラテン・パーティでサングリア、スペインパーティでもサングリア、バール・アルベルトの毎週火曜日R&Bフェスタでもサングリア(何の脈絡もない)、誰それの卒業記念パーティでサングリア・・・誰も彼もが安易な発想でサングリアを利用する。まあ無料になったりもするわけで、可愛いものであるが。

さてこのサングリア、作り方には無限のレシピが存在する。まず赤ワイン、砂糖、フルーツ、この3つがベースである。そこで終わりにするひともいるが、更に作り手のコダワリ?によってそこへ様々なリキュールが追加される。例えばラム酒テキーラ、カシャッサ51(サトウキビから作られるブラジルのリキュール)など、そうやってどんどんアルコール度は増していくのである。本場スペインでは、アランチャータ(ファンタ・オレンジのような炭酸オレンジジュース)を加えることもあるし、イタリアではレモン汁を風味付けに加えたりもする。つまり、絶対これ、といったレシピが存在しないのである。
 
わたくしがカフェ・ラティーノ(id:barmariko:20050125)で働いていたとき、ラテン・フェスタの当日の朝、オーナーのカルメンにサングリア作りを頼まれた。「お客がいなくて暇なときに、こうやってフルーツをひたすらカットして」使ったフルーツは、オレンジ(絶対外せない)、キウイ、リンゴ、洋ナシ、バナナ。そこへカルメンはドボドボとリキュールを加え始めた。ラム酒テキーラコアントロー・・・「ちょっとずつ、なんだけどね。これくらいパンチが効いてるほうが美味しいのよ」最終的にそれは、甘くて美味しい爆弾のような、危険な飲み物になってしまったのであるが。

バール・アルベルトのサングリアはいたってノーマル、赤ワイン・フルーツ・砂糖、のみである。ダウンタウンのサングリアもしかり(最もダウンタウンはサングリアを作ったのは一度だけ。全然ウケがよくなかったのだ)。ちなみに2年前、わたくしはスペイン人の友人を尋ねて、南スペインはグラナダ地方を旅したことがあるのだが、彼らに勧められて毎日色々なサングリアを試した。そこでは、サングリアと一言で言っても、必ず赤ワインベース、白ワインベースの2種類があり、どちらか選べる。ニッポンやイタリアでまだそれほど馴染みのない白サングリアの材料はこれまたシンプルで、白ワイン、フルーツ、砂糖、そこにラム酒を少し加えて馴染ませるだけである。つまり赤ワインを白ワインに替えただけなのだが、きゅっと冷やして飲むと、食前酒としてもなかなかいける一品であった。正直赤いサングリアよりもわたくしはこちらの白いほうが好きである。

さて、イタリアのバールやパブで何らかのフェスタの際にサングリアを作るとき、まず大きな透明のボールを用意する。これはどのバールでも共通の色・形で、同素材の透明な蓋がセットになっている(写真)。そこへカットしたフルーツをポンポン投げ入れ、ワインやら砂糖やらリキュールを足していくのである。使うものはこのボール一つ、至って簡単なサングリア作りである。さらにこのボールには同じ素材の透明お玉が付属していて、お客が来るたびに、お玉で1杯すくってコップに注ぐ。

親切な店では、サングリアを頼むと長細い串を添えてくれる。これでフルーツをつつきながら飲むことができるのである。確かに、ワインに漬かったフルーツはコクがあってとても美味しい。これを残したら勿体ない。

毎日サングリアを仕込むバールやパブなど、スペイン料理屋以外にイタリアには存在しないが、お祭りごとには頻繁に登場する。安くてお世辞にも美味しいとはいえないワインを、フルーティで爽やかな芳香のするドリンクに変身させる一つの手でもある。