氷を作ろう

barmariko2005-05-10

FACCIAMO I GHIACCI CON LA BUSTA
イタリアの田舎のバールで働くときの必須業務が「氷作り」である。都会の大きなバールでは当然製氷機もあるだろうが、ペルージャのこじんまりしたバールでは氷は必ず手作りなのだ。というのも基本的にイタリア人は飲み物に氷を入れない。例外はパブで飲むカクテルぐらいである。アイスコーヒーなど存在しないし、真夏の最中であっても水やジュースに氷を入れることはないから、そもそも氷の需要が少ない。氷など手作りで十分というわけである。

手作りといっても、ニッポンの家庭冷凍庫にある製氷ケースに水をいれるという類のものではない。一見ただのビニール袋に水を入れて凍らせるだけなのだ。図をご覧頂きたい。これは市販の氷作り用ビニール袋である。上部縦に入っている点線部分をピリッと切り離し、水注入口を作る。下部は20個前後(メーカーによって異なる)の四角い小部屋に分かれているので、水を入れて凍らせると小部屋の数だけ氷が出来るという仕組みだ。注意しなければならないのは、水を注入し冷凍庫に入れる前に、上部斜線部分をきゅっと結んで水が漏れないようにしなければならないということだ。

こんなのはニッポンで見たことが無い。初めてこの氷袋を使ったのは、ペルージャで初めて働いたカフェ・ラティーノ(このバールについてはこちらをどうぞhttp://d.hatena.ne.jp/barmariko/20050125)でだった。それまで触るどころかお目にかかったこともなかったので、これは一体どうやって使うんだと頭を悩ませた。オーナーのカルメンに使い方を教わった後でも、実際やってみると水が漏れてしまってきれいな氷が出来なかったりと、コツを掴むのに時間がかかった。この氷袋は家庭でも使用するのでスーパー等で市販されているが、20袋で大体2ユーロ(280円)くらい、ディスカウントストアに行けば100円前後で売っている。しかし、最初から穴のあいたものがあったり、変に安いものを使うとぎゅっと結んだ瞬間にビリっとやってしまうこともあったりと、これがなかなか曲者なのである。

バール・アルベルトやバール・フランコで働いたときも、客がいなくて暇なときはこの氷作りに励んだ。(バール・アルベルトはいつもの如くこの袋もしばしば品切れで、夏の真っ只中に氷が作れない、氷がない、という切ない思いを何度もした)製氷機が欲しいよ〜とその時は不満を言っていたわたくしであるが、今になって思えば懐かしい。デザインにも仕組みにも不器用な可愛さがあって味があるとはこのことだ。