エスプレッソなしでは・・・

barmariko2005-05-08


SE NON C'E ESPRESSO..
ある日の午後、親友アンドレアの家でイタリア語の作文を添削してもらっていたのだが、わたくしはあまりの眠さについつい欠伸をしてしまった。「あれ、眠いの?カフェ(エスプレッソ)飲む?」「あ、お願い!!」とアンドレアは早速わたくしの為にカフェをいれてくれたのだが、あまりにボーッとしていたわたくしは砂糖の代わりに、側にあったカフェの粉を再度入れてしまったのである。「あああああっ!!!ごめん、せっかく淹れてくれたのに!わたし半部眠ってるのかも」見るも無残な粉まみれのカフェ。「いいけどさ、カフェにカフェ入れて飲むひと初めて見たよ」と大笑いのアンドレア、珍しいからといってご丁寧に写真までお撮りになった。

イタリアがカフェ(エスプレッソ)の国であることはもはや世界共通の認識であるが、イタリア人はいつどんなタイミングでカフェを飲むのか。朝寝起きの目覚まし用、それからランチの後に襲い掛かる眠気防止及び消化促進のため、が一般的だろう。勿論カフェアレルギーのひともいるし、健康のためにカフェインを摂取しないようにしているひともいるから、全イタリア人がカフェを飲むとは限らない。しかし、多くのイタリア人はカフェを愛し、カフェにコダワリを持ち、カフェについて語ることができる。

そんな中でいつも不思議に思うのは、アリタリア航空である。あんなにカフェにうるさいイタリア人なのに、何故アリタリア航空のカフェはあんなに不味いのか。あれはカフェではなく明らかに普通のお湯で溶いた業務用アメリカン・コーヒーである。JALANAもルフトハンザもブリティッシュ・エアラインもエール・フランスも取り扱っている、あの不味いコーヒーだ。(といいつつ結局飲んでしまうのだが)
ローマ発アリタリアを利用したとき、隣に子供連れイタリア人夫婦が座っていた。お父さんは食後にカフェを頼んだのだが、運ばれてきたカフェを見て「?何か量多いな?」と首をかしげること数秒、「ま、いっか」と付属の砂糖袋を開けてカフェに入れた。ここで雄叫びが響き渡る。「CAZZO!!!(何だこれ!!)」砂糖だと思って開けたその袋から出てきたのは粒状のクリーム。コーヒー専用のあのクリームである。ここで分かって頂きたいのはイタリアにカフェ用クリームは存在しないということだ。カフェに入れるものは、砂糖か牛乳かリキュールだけ。クリームなど言語道断であるし、そんな発想すらないのだ。

「おい!何だこりゃ!白い粉だ、気持ち悪い!取り替えてくれ、カフェ、取り替えてくれぇー!」と叫びだすお父さん。横から奥さんが物珍しそうにそのカフェを覗き込み「ちょっと味見していい?」と言ったはいいが、一口含んで「マズ。」イタリア人からしたら、あの業務用の薄いコーヒーは有り得ないのである。そもそもアリタリア航空の乗務員が、あのコーヒーに耐えられるはずがない。ローマから成田、12時間の空の旅をあのコーヒーとご一緒にというのは、彼らにとって絶対不可能だ。

わたくしは確信している。アリタリアには絶対乗務員専用のエスプレッソマシーンがあるはずだ。彼らだけの特権、イタリアンカフェを淹れるマシーンが。あの業務用コーヒーを飲めるイタリア人は地上界に一人もいないのだ。それが空に上った途端飲めるようになるものでもあるまい。トイレの近くあのカーテンの奥に絶対あるのだ、秘密のエスプレッソマシーン。

一人ひとりにエスプレッソを配るなんて非効率だし、やはり飛行機の中では難しいに決まってるが、もしアリタリアでカフェやカプチーノが飲めれば「おお、さすがアリタリア!」と世間の評価は180度変わるに違いない。