ソルベットの季節

barmariko2005-04-28

LA STAGIONE DEL SORBETTO
ソルベットをご存知か?イタリア語でいう「シャーベット」である。写真で友人アンドレアが手にしているのがイタリアで最もポピュラーなレモンのソルベットだ。イタリア人はソルベットをおやつとしてよりも、ご飯の後の口直し的なデザートとして食べる。この日は煙草屋シモーネの家で大きなディナーがあり、そこで最後に振舞われたのがこのソルベットだった。大きなジェラード屋さんにも売っているし、市販のものもあるが、このようにグラスに入れて食べるのが普通だ。このレモンのソルベットは、甘みの中にもレモンの酸っぱさが損なわれずに同居した、まるでレモンをかじっているかのようなシャーベットである。ニッポンのシャーベットに比べると非常に軽くてクリーミーで口にいれたとたん溶けてしまう。この食感がたまらない。

ちなみにこのグラスはプラスチック製で組み立て式である。下の持ち手の部分が外れるのである。イタリアでは大人数のディナーやランチや、とにかくたくさんの人が集まることが多い。では全ての家に、シャンパングラスやデザートグラスが何十人分もあるかといえば、それは有り得ない。従ってこのように簡素なプラスチック式グラス等があみ出されるのであろう。さすがヨーロッパ、こういうデザインやアイデアはニッポンではなかなか見られない。

ソルベットやジェラートの歴史は古い。それこそ紀元前に遡る。例えばその昔ローマの英雄ジュリアス・シーザー(BC100〜44年)は若者をアペニン山脈に走らせ、氷や雪を運ばせてそこに蜜、ワインなどを混ぜて飲んだと伝えられている。また暴君で名高いローマの皇帝ネロも、アルプスから奴隷に万年雪を運ばせて、バラやスミレの花水、果汁・ハチミツ・樹液などをブレンドしてつくったものを楽しんだとも言われている。しかしこれらはいずれも当時の嗜好品として愛されただけであって、当然ながらジェラートやソルベットという形が確立されていたわけではない。

それがひとつのフォームを帯びてきたのは、9世紀前半アラブの「シャルバート」がシチリアにもたらされて「ソルベット」になった頃からだとされる。シチリアには夏でも雪が溶けないエトナ山があり雪や氷はいつでも豊富、さらに温暖な気候がもたらす果物やナッツの生産、さとうきびから生まれる砂糖の生産などが絡みあって、あっという間に発展したようだ。

実はわたくしはシチリアのお菓子があまり好きではない。甘すぎて、しつこくて一口食べたらもう結構です、と言いたくなるのだ。その例外がリコッタチーズのお菓子カンノーリとこのソルベットである。こりゃあ旨いの一級品なのだ。