イタリアのボジョレー「ヴィーノ・ノヴェッロ」

VINO NOVELLO

ニッポンは今、沸きに沸いている。何がってボジョレーである。わたくしは本場フランスでどのような盛り上がりがあるのか全く知らないのだが、ニッポンのそれは本国をしのぐほどではないかと思わせるくらい、凄まじい。しかしこれでも軽くなったほうで、バブル時代にはなんと「ボジョレーは解禁日に飲んでこそ価値がある」と信じられていて、当日空港に届いたケースを取りに行く人たちで成田は賑わっていたとか。それにしても、スーパーやコンビニでまで展開される「ボジョレー」ってそんなにエライわけ?ここまでくるとちょっと興冷め、と思ってしまう方、わたくし以外にもいらっしゃるに違いない。

ニッポンではあまり知られていないが、実はイタリアにもボジョレーなるものは存在する。その名も「ヴィーノ・ノヴェッロ」。ヴィーノ(vino)は「ワイン」の意味で、ノヴェッロ(novello)とはつまり、「新しく生まれた」という意味の形容詞である。本場イタリアで、これがどれくらい大騒ぎになるかというと・・・そうでもない。いや勿論、各カンティーナ(ワイン農園)では盛り上がるし、街中のスーパーや商店でも必ず小さなコーナーを置いて販売する。しかしあくまでも地域性の色が濃く、ワインがとれる地域でこそ盛大に祝うものなのだ。

しかしイタリア人が皆、ヴィーノ・ノヴェッロが好きかといえば決してそんなことはない。「解禁日」にこだわるかといえば、そんなことはない。イタリア人が全員「今年の解禁日」を把握しているかといえば、そんなこともない。

そもそもヴィーノ・ノヴェッロとは、その年のワイン豊作を祈って飲むためのものであり、一種のお祭りである。獲れたて新鮮な、熟成させていない若いワインだから、当然その味わいはとてもフレッシュである。となると、好き好きがあるのである。むしろ「ノヴェッロは美味しくない」といってはなから見向きもしないイタリア人もたくさんいる。ニッポンジンがこれほどまでに「ボジョレー解禁」に固執している姿は、きっと奇異に違いない。

で、実際その味はどうなのかというと、個人的には好きである。友人のアンドレアがやはりノヴェッロ好きなため、去年の今頃はみんなで集まるごとに、新しいノヴェッロを試していた。まず貧乏な我々にとってありがたいのが、その値段の安さ。3〜5ユーロ(420円〜700円)で十分美味しいものが購入できる。5ユーロ以上のものになると、上等品である。

熟成していないためタンニンを感じず、とにかく若い。従って赤ワインとはいえ少し冷やして、白ワインのように味わうのがベストとされる。そして「赤だから肉や濃厚なチーズ」というのはNGである。繊細なフレッシュさを味わうためには、淡白な鶏肉や魚介類、あっさり系チーズなどがぴったりなのだ。食前酒代わりに頂いても、もちろん美味しい。

ペルージャが位置する、ウンブリア州は、ニッポンではこれもまだあまり知られていないが、美味しいワインがとれる地域である。有名どころで言えば「サグランティーノ・モンテファルコ(赤)」「モンテファルコ・ロッソ(赤)」「オルヴィエート・クラッシコ(白)」など。ということは、「俺んち、ワイン作ってんだよ」みたいなお友達だって、ペルージャには存在する。こういう人が一番ありがたい。一升瓶のような曇りガラスのビンに、自家製ワインを詰めてディナーに登場するヤツ。この旨さといったら。ワインというより「葡萄酒」と言ったほうがいいかもしれない。濃厚なジュースを飲んでいるような気分になる。決して悪酔いせず、食事がパーフェクトにすすむ。

ということで、わたくし的には賛否両論のボジョレー騒ぎであるが、この時期イタリアにいたらやっぱり外せないのが「ヴィーノ・ノヴェッロ」だったりする。

ところで、フランス現地のボジョレー状況はどんなもんなのだろう?ここは是非、id:dpiさん、id:oranginaさんにお知恵拝借といきたいところだ。