我らがジュセッペ 

barmariko2005-04-29

IL NOSTRO AMICO,GIUSEPPE
そろそろ紹介しなくてはならない。何度も登場している我らのアミーコ、ジュセッペ。シチリア出身の彼はペルージャプログラマーとして働いている。そして友人アンドレアの同居人の一人だ。

お酒は飲まない。煙草は吸わない。サッカー嫌い、夜22時半就寝。朝6時起床。異様な甘いもの好き。最近めっきり太ってしまったということで日々ダイエットを気にしている。ルーマニア人のとびっきり美人な彼女がいて、遠距離恋愛の結果ついに今年ゴールインの予定。

幼少時代のお気に入りの写真が1枚あり、初めてジュセッペとアンドレアの家へ遊びに行く者はこれに目を通すことが義務付けられる。「これ、誰?」天使のような微笑、10歳のジュセッペは、ウィーン少年合唱団もビックリの美しさなのである。彼もそれをよく分かっていて「昔は美形だったんだ」と話のネタにし、新しいメンバーがいるときは必ず写真を持ってくる。

ちなみにこの時アンドレアが対抗心を燃やして自分の3歳の頃の写真を出してくることがある。そうなると我々は、どちらの写真が可愛いか回答することが義務となる。アンドレアの幼少時代の写真は更に衝撃的である。何故なら今の彼は坊主だが、3歳の頃はふさふさとした金髪がチャームポイントだからである。
話をジュセッペに戻そう。彼は食べ物にうるさい。コダワリがある、とも言えるが時々それは根拠のない迷信に近いものがある。例えば「夜ピーマンは食べない」。何でもピーマンは重いので夜食べると消化できない、というのである。それでいてたまの週末、夕食後に皆で1杯ひっかけに行くと、お酒を飲まない彼は一晩中ピーナッツをポリポリ食べている。ピーナッツこそ、カロリーも高く消化に悪い食べ物だと思うのだが。ちなみにイタリアでは「ピーマンは重い」「消化しにくい」という迷信は非常にポピュラーで、もはや一般常識に近い認識度である。他の友達も「何か今日胃が重いんだよねー。昨日ピーマン食べ過ぎたからだ、きっと」などと普通におっしゃるのだ。とにかく食べる時間帯が夜だという理由だけで、ジュセッペは几帳面に自分のお皿からピーマンだけをはじくわけだが、これが昼だったら問題なく食べ切るのだ。

東洋人の女の子に美人はいない、と数年前まで豪語していたらしいのだが、「ラスト・サムライ」の小雪「リング」の松嶋奈々子、そして「LOVERS」のチャン・ツィーを見て完全に考えを変えた。アンドレアとジュセッペと3人で「LOVERS」を見にいったときは映画の間中「ケ・ニョッカ・・・(何ていい女)」と身を乗り出していた。

ところがせっかく東洋の美をご理解頂けたというのに、最近「ニッポンジンの女の子は皆結婚相手を探しにイタリア留学する」という失言をし、内輪で批判の対象となった。イタリア人の彼氏を持つニッポンジンが多いから、というのである。当然ながらわたくしは反論した。「あのさあ、普通に考えてイタリアは仕事もないし、物価は上昇を続けるし、イタリア男はマザコンだし、夫探しにイタリアに来るってちょっと非現実的で極端じゃない?それにイタリアに滞在して彼氏ができるというのは、ニッポンジンに限ったことじゃないでしょう。そういうあんたはいつエレナ(ジュセッペの彼女、ルーマニア人)と知り合ったのよ?」「2年前の交換留学制度でエレナがペルージャ大学にやってきたとき」「ほら、ね?で、結婚するんでしょ?」「うん、その予定。」「ほら、みなさいよ。じゃあ彼女も旦那探しに留学したってわけ?」「エレナは違うんだ!」「同じです」

それについてアンドレアはこう言った。「イタリアに旦那探しにくるのはやっぱり東欧の貧しい国が多いと思うけどなあ。ポーランドとかルーマニアとか、ウクライナとか、あとロシアもね。彼らからすればイタリアなんて経済的にも全然マシだからさ、でも入国規制が激しいからやっぱり永住権得るためには現地で結婚するのが早いんだよな。生きるために命がけで旦那を探しにくる国民って言ったら、やっぱりこのあたりだと思うよ。ニッポンジンってのは違うんじゃない?」「ニッポンジンの場合は、お金や永住権欲しさっていうよりも、アドベンチャー欲しさと非現実への欲求が多いと思うな。単一的な変化のない日常、物理的に生きてはいけるけど何か物足りない、とかね。それは勿論仕事だけじゃなくて、愛に飢えてる人もいると思うけど。勿論そこで旦那ができればそれはそれでいいけど、それは後からついてくるものであって、そんな打算的なものじゃないよ」とまあ波紋を呼んだ「ニッポンジン旦那探しの旅」発言であった。

ジュセッペがシチリアから出てきたのは今から5年前、25歳のときである。それまで料理など全くしたことがなかったのだが、最近興味がフツフツと湧いてきたらしく、よくディナーやランチに呼んでくれる。しかも人を招待しておきながら、インターネットで検索してきた初めてのメニューに挑戦されるので、こちらはヒヤヒヤものである。メニューに目は通すが分量も材料も手順も適当で、全て勘でやってしまうのである。いつだったか「豚ヒレ肉のオレンジソース煮込み」は大成功だった。しかし「スモークサーモンとウォッカのリゾット」は4人分なのにウォッカをボトル半分も入れてしまい、酒臭くてとてもじゃないが食べられなかった。「カネロニ」を作ったときは、カネロニにまだ火が通っておらず、小麦粉の味がした。

これらが全て組み合わさって、ジュセッペの魅力があるのだろう。大の大人が夜10時も過ぎると「眠い・・・」と目をこすりだす。わたしの大切な友達のひとりである。