アマーロいろいろ

barmariko2005-04-27

GLI AMARI
アマーロとはイタリア語で「苦い」の意味、そして薬草を溶かした食後酒の総称である。昔祖母に「健康にいいから」とすすめられた養命酒イタリー版のようなものだ。イタリア人は食事の後にアマーロをよく飲む。食べすぎて膨満感があるときや胃がもたれるとき、消化を促すのである。しかしお薬とはいえれっきとしたリキュールで、アルコール度数は平均して高いので飲み過ぎには要注意である。バールやパブにはアマーロ専用の小さなグラスがあり1杯はおおよそ40cc、煎じた薬草によって味も色も香りもまさに千差万別なのでイタリアで是非とも試したいものの一つである。

大体どのバールやパブにも置いてあるアマーロは以下の通り。

  1. アヴェルナ(AVERNA)
  2. モンテ・ネーグロ(MONTENEGRO)
  3. ルカーノ(LUCANO)
  4. イェーガー・マイスター(JAGERMEISTER)
  5. サンブーカ(SAMBUCA)
  6. フェルネット・ブランカ(FERNET BRANCA)
  7. ブランカ・メンタ(BRANCA MENTA)
  8. ボルゲッティA(BORGHETTI)

1〜4がイタリアで最もポピュラーなアマーロではないだろうか。その中で4の「イェーガー・マイスター」だけがドイツ産、あとは全てイタリア産である。ご近所フランスにもたくさんの薬草酒があるが、イタリア人は全くといっていいほど見向きもしない。

5サンブーカラツィオ州で作られるアニス系の透明なアマーロだ。グラスに入れコーヒー豆を浮かべて火をつけてから飲む、というスタイルが世界的に流行ったが、ここイタリアのバールカウンターでそんなことをわざわざする人はいない。

6,7は姉妹品で、ミント系の苦い苦いアマーロである。実はわたくしは飲めない。苦すぎるのだ。二日酔いには効きそうだが、この苦さはイタリア人にもそう簡単に受け入れられるものではないらしい。8「ボルゲッティ」は変り種である。カフェ味の甘いアマーロで、初めてのひとにも非常に飲みやすい。そう言えばニッポンでは見たことがない。
アマーロの飲み方はストレートか、氷入り。ストレートはイタリア語で「lisio(リッショ)」と言う。モンテネーグロをストレートで、なら「モンテネーグロ・リッショ」で完璧だ。氷入りは「con ghiaccio(コン・ギアッチョ)」である。昔ニッポンのバーで「甘さと苦味の同居するものが飲みたい、でもさっぱりしたものがいい」と言ったらこの「イェーガー・マイスター」をソーダで割ってライムを搾ってくれた。これがまた美味しいのだ。しかも薬草酒を薄めてライムを絞るんだから意外とヘルシー?とうっかり安心してしまいそうである。

しかしこの飲み方をイタリア人に話したら「うぇーーー!アマーロをソーダで割るの?有り得ないよ、しかもライム?ゲーー!」と口を揃えて批判される。アマーロはストレートもしくは氷だけ、というシンプルな飲み方しかいかんというわけである。

わたくしがいつも飲むのは「イェーガー・マイスター」か「モンテネーグロ(イタリア産)」勿論氷なし。「イェーガー・マイスター」は約50種類ものハーブやスパイスから出来ており、その複雑な味わいと丁度良い甘さがたまらない。

更に気分で「ストレーガ(=魔女の意味)」を飲むこともある。このストレーガは南イタリアのベネヴェント町のアマーロで、この町には古くから魔女の言い伝えがあるため、この名前がついたらしい。但しどのバールやパブにもあるわけではない。アマーロにしては珍しいサフランによる金色が特徴で、色からも想像がつくようなバニラ香やレモンの香りが絶妙にミックスした「こいつぁウマイ」一本である。

大事な一本を忘れてはならない。イタリアはサルデーニャ島の「ミルト・ディ・サルデーニャ」、ミルトとは植物の名前であるが辞書を引くと日本語では「銀梅花(ギンバイカ)」と言うらしい。(写真上はミルトの花)これは本当に旨い。凝縮されたベリー系の食後酒である。苦味は全くなく、初めてのひとにも飲みやすい。但し飲む時に必ず注意しなければならないのは、他のアマーロと違って要冷蔵であるということ。非常に濃厚で甘いので冷えているほうがさっぱりして美味しいのだ。たまにそういうことを分かっちゃいないチンケなバールでは外に放り出されてすっかり常温になってしまっているので、そういう時は絶対にわたくしは頼まない。

アマーロ、飲みたくなってきた方いるのでは?イタリアへ1週間でも旅行をしたら、毎晩食後にバールやパブへ寄って色々試されてはいかが?勿論リストランテでも食後に勧められたりするが、値段が高くつくので近所のバールへ行って1杯引っ掛けるのがよいだろう。量も40ccとチョッピリであるし、寝る前に体も温まる。さあ。ほら。(って誰に言ってんだ)