イタリアの光熱費の現状

また昨日ショックを受けることが起きた。ショックというか、いい加減慣れろという話ではあるがわたくし非常に純粋なものでいちいちキレてしまうのである。昨日我が家のキッチンには久し振りに同居人3人全員が勢ぞろいしていた。というのも以前書いたようにブラジル人のカリーナ(25歳)、イタリア人ロセッラ(31歳)は彼氏と半同棲生活を送っているため、我が家には殆どいないからである。

「ちょっと見た?昨日届いた水道費。」とカリーナが切り出した。「見たわよ、わたしが持ってきたんだから」とロセッラ。「80ユーロ何て今の私には高すぎる!!3人で割って・・・一人当たり27ユーロか。ガスと電気もあわせると、今月は一人45ユーロも払わなくちゃいけないのか。」と肩を落とすカリーナとわたくし。ここで少し説明すると、イタリアではガス・電気は毎月末に請求書が送られてくる。水道は年3回、つまり4ヶ月毎に請求がくる。まあ今回4ヶ月分で80ユーロということは、1ヶ月当たり20ユーロ(2800円)だからニッポンに比べたら大したことはないだろうし、3人で割ればさらに安くなるわけだが、平均給与がニッポンの約半分であるイタリアにおいてこれはやはり「高い」の一言である。

「でもさ、この家は何だかんだ言って安いよね。燃費がいいというか。暖房も一日中つけっぱなし、毎日誰かが洗濯機も回してるのに電気・ガスなんて毎月30〜40ユーロでしょ。3人で割ったら全然たいしたことないよね。まあ今回の水道費はすっかり存在を忘れてたからショックは大きいけど」とわたくしが言った。そう、わたくしたちは光熱費の上がる冬季でも一人毎月35ユーロ(4500円)くらいの出費ですんでいる。不思議なのは家によってこの光熱費に天と地ほどの差が見られることだ。

「わたしが昔住んでいたアパートは酷かったよ。一人当たり最低でも60ユーロはとられてたもん、光熱費に。6人で住んでたにもかかわらずだよ。わたしの彼氏の家もそう。彼は毎月50ユーロは払ってるはず。」とカリーナ。「わたしのペルージャでの一番初めの家もそうだった。5人で住んでたけど一人60ユーロくらいだったな。しかもまだ暖房殆どつけてなかったのに」とわたくし。「簡単よ。この家の登録者にペルージャ市民権があるからよ」とロセッラ。何だって?

「は、はあ??登録者って誰?ロセッラ、あなた?」「違う違う。ラウラよ。昔ここに住んでいたラウラ。今はもういないけど彼女はカラブリア州の実家からペルージャに市民権を移動させててペルージャ市民として戸籍登録されてるから、いまだ彼女あてにやってくる光熱費の請求書は他の家に比べてはるかに安いってわけ。」ラウラは知っている。2年前までこの家に住んでいたのだが、わたくしが入居すると同時に結婚のために出て行ったのである。「イタリアはこうなのよ。ペルージャ市民であれば光熱費の支払いは安くなるけど、外国人や他の街から市民権を移してない人からはボッたくるのよ。わたしは市民権移してないしまだ実家のままだから、この家の登録もラウラのままにしてるの。そうすれば請求書安くて済むでしょ」

わたくしはこの事実を確認するために早速アンドレアに電話した。「マリコ、そうなんだよ。恥ずかしいんだけどさ、イタリアはこうなんだよ。でも僕も市民権プーリアの実家から移してないし、僕の同居人は誰もペルージャに住民登録させてないんだ。だから僕らも光熱費多めに払ってるよ。」「ってそれでいいわけ?何で移さないの?」「だって移したら地元プーリアの選挙にも参加できないし、住民税も変わってくるし。」

これはいつかお話したイタリア郵便局のコッレンティスタ(口座所持者)制度と同じである。全く都市自治体の強化活性を図った中世じゃあるまいし、ペルージャに市民権を移動させてないからといって、光熱費を多く払わねばならいとは納得がいかない。イタリアのコネ社会、縁故主義つまりクリエンテイズモを色濃く表す一面である。外国人である私たちは、ペルージャ外国人大学に毎月240ユーロもの大金を払い就学用のビザを申請する。その際当然ペルージャでの住所も明確にし、申請している。それだけでは駄目なのか?240ユーロに加え、市民権のあるペルージャ人よりも多めに光熱費を払わねばならないなんておかしいではないか。しかもこれを回避させるのも意外と簡単で、ペルージャ市民権を持つものが登録している家に運と縁で当たればいいのである。我が家も精密には市民権を持つラウラはもういないのだし、家の登録者変更をしなければならないところなのだろうが、そんなことを自ら申請して高い光熱費を払う者がいるわけない。それにしてもこの社会制度に「仕方ないんだよ、イタリアはこうだから」と納得してしまっているイタリア人も凄い。郷に入っては郷に従えなのか・・・