4ヶ月ぶりに会うロセッラ(前編)

barmariko2005-08-13


FINALMENTE TROVO ROSSELLA!

元ルームメイトのイタリア人女性ロセッラについての前号はこちら→http://d.hatena.ne.jp/barmariko/20050805

ペルージャに舞い戻り、早速ロセッラに電話する。「チャオ!!!マリコやっと帰ってきたのね!早くいらっしゃいよ!待ってるから。・・・でも一つだけ言わなくちゃいけないことがあるの。嬉しい知らせではないの。ちょっと言いづらいことなの・・・」「何なに?どうしたの?わたし、何かやらかした?」「違う違う!マリコが悪いんじゃないの。・・・あ〜やっぱり電話だと上手く説明できないから早くこっち来て!」(写真がロセッラ)

はて何事か?気になる物言いではないか。一体何なんだと思いながらロセッラの元へと走る。ダウンタウン(オーナーがロセッラの彼氏で、わたくしが2年間働いたパブ)がつぶれる?いやそれくらいなら電話でも言えるだろう。出来ちゃった結婚とか?いやしかし、それなら朗報ではないか。嬉しい知らせのはずである。

ドアを開けると懐かしいロセッラの顔。「長いようで早かったよね!4ヶ月なんてあっという間!でもさ、マリコはもう働いているというのに、あたしはまだ就職活動中。この前話した警察での仕事、あれ最終面接での倍率が約500倍だった!勿論駄目だったよ。そりゃ、あたしがもう今年で32歳ってこともあるだろうけど、それにしてもイタリアの不景気はヒドイんだから。あたしの友達はみんなイギリスに働きに行ってるけど、まさかステファノ(ロセッラの彼氏)を置いて旅立つわけにもいかないし。」あっという間に喋りだす。そう、ロセッラは超お喋り(しかも静かに喋るということを知らない)、さらに南イタリアカラブリア州出身で、典型的な南部の熱い心を持ったアグレッシブな女の子である。とはいえ情に濃く世話好きで温かいひとなのである。つまり将来は、典型的な南イタリアのマンマである。

「ああ、マリコにいっぱい報告したいことがあるのよ。まずね、マリコの代わりに入ってきた女の子ね、30歳ロシア人なんだけど。子持ちなのよ。父なし子だけどね。1歳半らしいんだけどロシアに置いてきたんだって。でね、イタリアへ来た目的は『ダンナを探すこと』のみだって!ダンナを捕まえたら、子供をこっちに呼びよせるんだって言ってた。でさ!何とその彼女が捕まえたイタリア人男性っていうのがさ、48歳なのよ!ちょっと18歳も年上なのよ!この前そのオトコが彼女を送って家の下まで来たとき、わたしとカリーナ(もうひとりの同居人)でベランダからこっそり顔を覗き見したの。ただのスケベオヤジよ、あれは。若くて金髪のロシア人なら何でもいいのよ。でも彼女だってつまりはイタリアで永住権を得るために、子供を養育してもらうためにダンナを探してるわけだからさ、用は似たり寄ったりよね。お互い利が一致してるからいいのかしらね。でも彼女がこの家にあのオトコをあげたりするのだけは嫌!お茶一杯飲んでいってほしくないわ!」

ロシアや東欧諸国ではその厳しい社会情勢が引き起こす経済難民が後を絶たない。いくらイタリアが不景気だとはいえ、いくら給料が日本の半分だとはいえ、いくら失業率が高いとはいえ、イタリア人の平均所得は例えばポーランド人の平均所得の約3倍とも言われている。見方によっては、まだマシなわけである。ロシアや東欧諸国の一部の人々がイタリアに流れ、その結果偽装結婚やら売春やら、喜ばしくない社会問題に繋がっていることは寂しい現実であり、ニュースや新聞でも時たまお目にかかる。つまり悲しいことにイタリアにおける一つの認識となっているのだ。

だからロシア人の金髪女性が「ダンナを探すの。イタリアで。子供を認知してくれるひとじゃないと」等と真顔で言うと、本当に洒落にならない。みんあ、ああでもないこうでもないと、彼女の過去や生い立ちを想像してしまうのである。

ロセッラは続ける。「それだけじゃないのよ、彼女本当に滅茶苦茶なのよ、いつも何かやらかすの。まずね、玄関のドアをきちんとしめないの。半開きのままなのよ、有り得ないでしょ?ニッポンみたいに平和な国のひとがそういうことやるならまだ分かるけど、ロシアの子よ?どうなのよ?それからバスルームのシャワーね。これもきちんと締めないからいつも水がチョロチョロ出てるのよ!あと部屋の窓。外出するときは窓を閉めてねっていつも言ってるのに、毎回開け放し。本当に危ないったら!で、お決まりのキッチンの使い方ね。ガス台が汚いままなのよ、いつも。ちょっとマリコが出て行ってから、ここに何枚張り紙したと思う?ほら見てよ!」見れば玄関には「ドアはきちんと閉めましょう」、バスルームには「シャワーの栓はきちんと締めましょう」昔はなかった注意書きがあちらこちらに貼ってある。

まあ何かと話題性のあるひとが引越しきたことだけは間違いないようだ。しかしロセッラが電話でわたくしに伝えたがっていたのは、まさかこれだけではないだろう。