4ヶ月ぶりに会うロセッラ(後編)

barmariko2005-08-15


FINALMENTE TROVO ROSSELLA 2..."CHE COSA E'CONGUAGLIO?"

さてそれではロセッラがわたくしに言いたいこととは何なのか?電話ではとても言えない、ちょっとデリケートな且つ喜ばしくない話とは一体?ロセッラは物凄く気まずそうにわたくしにあるものを見せた。それは15か月分のガス代の請求書だった。

「あのね、わたしも知らなかったの。一昨日届いたの、これ。」「だってわたしたち毎月ちゃんと請求書通りに支払ってきたじゃないの?」とわたくし。「だからこれは、その差分なの。今まで月末に届いていた請求書の裏面に、ほらここ見て、注意書きが書いてあるのよ。”今回請求させて頂く金額は、昨年の数字をもとに算出しております。必ずこの数字を各家のメーターの数字と照らし合わせ、差分がある場合は自己申告してください”って。」「????なにそれ?そんなの知らなかったよ?じゃあわたしたちの実際のガス代はもっと高かったってこと?その差分支払いが15か月分いっぺんにきたってこと?で、幾らなの?」「マリコ、それが・・・430ユーロ(約6万円)なの」「ええええええ?ホントに?まあでも3人で且つ15ヶ月で割ったとしたら、毎月1人あたり9ユーロ(約1300円)の差分があったってことか。いや待って、最初の7ヶ月は4人暮らしだったから、もっと安くなるね」

それにしてもおかしな話である。そもそも、昨年の数字をもとに算出されるガス代の請求書の存在意義が分からない。わざわざご丁寧に請求書を毎月送るのなら、何故当月の数字で請求しないのか?昨年の数字ってどういうことだ?差分があるのが当たり前である。イタリアのガス局は(しつこいが)、昨年の数字で請求書をおこし、差分があって申告してきたひとには改めて差分処理をする。その時点で二度手間だし、当然ながら漏れがある。わたくしたちのように気づかないひとなんて山ほどいるわけだから。そのひとたちには、約1年半後にまとめて差分請求をするわけだ。二度手間どころか三度手間、四度手間の話である。最初から当月の数字をちゃんと調べて請求すれば、100%省ける労力である。ペルージャなどそれでなくとも、外国人やイタリア人学生の出入りが激しい街なわけで、約1年半後に請求書が送られてきた時に、当時の人間がまだ住んでいる可能性のほうが低い。では誰がその差分を払うのか?運悪くそのときその家に住んでいる者が払うしかないのである。
美しいだけの国ではない。パスタが美味しいだけの国ではない。太陽と芸術の国イタリアには、住んでみるとこういう日本ではあまり考えられないような矛盾がたくさんあるのである。それにしても430ユーロというのは高すぎる。わたしたちそんなにガス代使ってた?「マリコ、忘れちゃいけないよ。去年わたしたちが誰と暮らしていたか?」「分かってる。わたしも今それを考えてたとこ。あいつらね。あのメキシコガールズたちね。」「今さらあたしがメキシコまでこの請求書をもっていけると思う?連絡先すら分からない。結局わたしが払うのよ・・・」メキシコガールズたちは、本当に最悪なルームメイトだった。1部屋をダブルルームとして2人のメキシコ人に貸したのだが、当時19歳の彼女達は、完全にバカンス気分で毎日を謳歌していた。2人部屋と称して毎晩何人ものメキシコ人やパナマ人や、つまり南米圏のうら若き女の子たちが泊まりにきて、その都度シャワーやらキッチンやら使い放題なわけである。丸1ヶ月は、彼女達の兄弟が遊びに来ていて、1部屋に4人が住んでいたこともある。その話はまた細かく書くとして、今回の15か月分の請求書のうち、7ヶ月分はそのメキシコ人2人に支払い義務があるわけだ。今更、何を言っても遅いのだけれど。

ロセッラがこう叫ぶ。「神様は不公平。メキシコガールズなんて、超金持ちでプール付きお手伝いさん付きの生活送っててさ、こんなガス代なんて痛くもかゆくもないだろうに、請求書は届かない。わたしみたいにダウンタウン(彼女の婚約者がオーナーの店)の清掃をして毎月家賃を払ってる一般市民のところに限ってこんな多額の請求書が届くのよ!しかも彼女達の分まで払うなんて!」「何でロセッラが払うの?仕方ないよ、3人で払おうよ」「駄目よ、マリコはここ3ヶ月は帰国していなかったわけだから、15か月分のうち12か月分だけでいいから。カリーナ(もうひとりのルームメイト)は入居が去年の10月だから、それ以降の差額だけでいいよ。住んでもいない月の分を払わせられないよ。あとはわたしが払う。」「ちょっとそれフランコ(家のオーナー且つ大学前のバール・フランコのオーナー)に話した!?」「話した。直ぐに。ヤツ、わたしに何て言ったと思う?”僕も自分の家のガス代を払わなくちゃいけないんだ”だって。」「・・・。」

「わたしもうこの家出ることに決めた。かれこれ6年住んでいるけど、フランコはいつもこうなの。普段は何もかもわたしに任せっぱなし。光熱費の支払いも入居者の管理も何もかも。それでいて、何か起こってもしらんぷり。今回だって本当になんでわたしが払わなくちゃいけないのか分からない。」何て可哀想なロセッラ。しかし、イタリアのガス局がこうである限り、今回のような例はいつでも起こりうるのだ。

マリコ、本当にごめんね。マリコが戻ってくるって言った日の2日前に届いたのよ、この請求書。せっかく戻ってきてくれたのに、”ガス代払って”なんて誰が言いたいと思う?タイミング悪すぎるよ!」「気持ちは本当に分かるけど、気にしないでよ。むしろタイミング良かったと思ってよ。」全くいろいろあるものである。イタリアは。今日も真っ青に晴れ渡った空の下で。