トーマス&イヴァナ家で至福の時間

barmariko2006-03-16


ペルージャへ戻るとまず連絡を入れるのがここ、トーマス&イヴァナ邸。どんなに突然帰ってきても、快く翌日のディナーに招待してくれる。別にディナー欲しさに連絡するわけじゃ勿論ないのだが、それでも期待せずにはいられないのが彼らの家のディナーなのだ。同じワイン、同じ料理は絶対サービスしない(ってこれではまるでリストランテである)。毎回必ず嬉しい驚きをプレゼントしてくれる。日本酒の大ファンである彼らの家に招かれるときは、必ず日本酒を手土産に持っていくのだが、ディナーが始まるや否やまるで「海老で鯛を釣った」ような気分になってしまう。

今回のディナー、テーブルを見れば珍しい小道具。キャンドルが設置されたコンロである。そう、彼らはなんと「オイル・フォンデュ」を用意してくれたのだ。オイル・フォンデュとは間違ってもイタリアンではない。そしてこの保守的な芸術大国では、イタリアジン家庭のディナーに招待された時に、イタリアン以外の料理に出会うことはとっても珍しい。トーマスはドイツ人。イヴァナはイタリアジンであるがアジア料理を始めとする世界各国の料理に魅せられている。料理は創造するもの、が信条の彼女は、今日もオイル・フォンデュ用のソースを何と7種類も手作りしてくれた。

百聞は一見にしかず。




辛いもの好きのイヴァナ。やっぱりピリ辛ソースは外せない。ニョクマムベースのタイ風ソース、カレーソース、たっぷりのルッコラを入れたグリーンソース、ニンニクの利いたアリオリソース。そしてこれも絶品。トスカーナ地方の超高級オリーブオイルにフレッシュなローズマリーを一枝加えて香りを移したもの。写真でお分かり頂けるだろうか。ブルーの陶器にささったローズマリー。これで十分芳香になるのである。このダイナミックさ、さすがである。ああ、こうもたくさんソースが登場すると、それだけで楽しくなってしまう。テンションは上がりっぱなしである。




そしてさらに驚きなのがこのプレート。こんなものを何枚も所持している家など、イタリア中探してもそうそうあるものではない。ニッポンのお子様ランチプレートを彷彿とさせるような、どことなく懐かしい可愛らしいアイテム。年に数回という使用頻度で、ここまで完璧に揃えてしまうというのは、「食」に対する執着が半端ではない証拠である。味さえ良ければよいのではない。食器もナプキンも全てがトータルコーディネートされてこそ、理想の食卓が出来上がるのである。「ソースがたくさんあるから、それぞれプレートのここに入れてね。揚がったお肉はいったんこの中央部分に置くといいわよ。アツアツだから少し冷まして・・・その間にソースは何がいいかなって選ぶのよ。楽しいでしょ?」はい、楽しいです。
ちなみにオイル・フォンデュ鍋は、ステンレス製のものが実用的とされ、一般流通しているのだが、イヴァナもトーマスも「鉄」にこだわり、まるでニッポンの南部鉄瓶のようにどっしり重鎮なものがテーブルの中央に据えられているのも嬉しい。

彼らの家に招待されると、シャッターチャンスが多すぎて困ってしまう。食べたいが写真も取りたい。本日のワインも忘れずにカメラに収めなければ・・・とシャッターを向けるとイヴァナが一言。「あらワインも撮るの?ちょっと待って!ここにブドウを置きましょう」そう言って一房のブドウをボトルの横に添えた。ワインにブドウ房。まるで宗教画のようなそのコントラストが咄嗟に浮かぶのは、やっぱり彼女が芸術家だからだろうか。