ゲームに群がるひとたちⅡ

barmariko2005-06-08

I RAGAZZI CHE GIOCANO OGNI GIORNO AL BAR Ⅱ
(まずは前号を読まれることをお勧めしますid:barmariko:20050604)
ガリバルディ通りのバール・アルベルトの片隅には、3台のスロットマシーンと1台の両替機がある。毎日毎日ここにいつものメンバーが勢揃いし、朝から晩まで(多少のメンバー入れ替えはあるものの)駄目男臭が充満する。

わたくしはいつも決まって朝の11時から夕方18時くらいまで一人きりで店番をしていたのだが、このゲームに群がるひとたちが鬱陶しくてならなかった。何が嫌だって「両替してくれ」「50ユーロを10ユーロ札に替えてくれ」「両替機の中の50セント玉がもう切れてるよ!」と人の顔を見るなりそれしか言わない奴らが多いのだ。あたしは両替商か?

しかも両替ができないと知って怒り出す者もいる。「おい!両替できないってそれじゃあ困るんだよ!俺は今ゲームの途中なんだ!」つまり負け途中なので絶対止めることができないのだ。こういうひとたちは「あと少し、あと少しで巻き返せる」と信じて疑わないので、「両替ができない」ことによって強制的にゲームが終了させられると、わたくしに八つ当たりをする。まるで彼らの幸運をわたくしが奪ったかのように。一度いい加減頭にきて「ちょっと!うちは両替するために店開けてるんじゃないのよ。ゲームしたかったら小銭は持ってきな!」と言ってしまったが、本人は寝耳に水である。

ゲームをしながら何かが飲みたくなり、しかしゲームから手は離せないという客は「マリコー!カンパリ・ジンー!」と首だけちょっとこっちに向けて叫ぶ。ていうかあたくし、あなたの奥さんでも召使でもないんですが。飲み物くらい自分でカウンターに取りにこい!とついつい意地悪くなってしまう。

バール・アルベルトのスロットマシーンも、パチンコと同じで勝てば当然換金できる。但し勝った人は、得点が表示された後、自分の名前もしくはサインを3文字以内で画面入力しなければならない。(フランチェスコだったら「FRA」というように)その得点と名前をわたくしが確認して初めて彼らはお金を貰うことができるのだ。

しかし彼らの多くは名前を打つことすら億劫がって、アルファベットをそのまま「AAA」で入力して済ませることが多かった。そうすると「勝者リスト」の最初から最後まで「AAA」とか「AAB」とか「CCC」とかそんなありきたりの文字が並び、一体誰が勝ったのか、そしてさっきこちらがお金を払ったのは一体どの名前に対してだったのか、が分からなくなる。それを防ぐために、わたくしはいつも「誰が」「何点獲得して」「名前は○○で入力して」「わたしは幾ら支払った」という一連の情報を紙に複写し、レジの下に入れていた。そうして一々チェックしないと客の中には絶対「この6000点AAAって俺だよ。金くれ」と他人の得点をまるで自分のもののように申告し、あわよくば金をふんだくろうとする奴が出てくるのだ。

アルベルトがレジにお金を入れるのを忘れたまま、お昼やらカヌーやらに出掛けてしまい、この勝者たちにお金を払えないことも度々だった。「マリコ、いつになったらアルベルトは帰ってくるんだ?おい、電話してくれよ。この金がないと今日一日何にもできないんだよ」はいはい、と空返事だけして面倒くさいのでそのままほっておいた。「電話してくれた?」「うん、でも話中。」

毎日毎日この駄目駄目くんたちのお相手をするというのは、簡単そうに見えて実は結構ストレスが溜まるものである。仕事だからと割り切ってしまえばいいのだろうが、「ねえ、あんた一体なにやってんの?」「お金こんなとこで浪費しないで、ちゃんと働きなさいよ」といちいち(口にこそ出して言わないが)反感を持ってしまうのである。

(ちなみに写真は常連ゲーマーの2人。彼らはまあ若いということもあって、何と言うか非常に扱いやすい。とってもシンパティコ(=親切な、感じ良い)である。)