ジェラルドのディナー

昨夜突然、アンドレアとジュセッペのもう一人のシェアメイト、ジェラルドから突然のディナー招待をうけた。どうやらジェラルドはもう一人女友達を呼んでいるらしく(どう考えてもこちらがメインだと思われるが)、どうせならみんなで一緒にご飯食べましょうということらしい。

昨日のブログでモッツァレッラについて書いたばかりだというのに、ジェラルドのディナーの前菜はまさにそのモッツァレッラをふんだんに使ったもので、その美味しいこと。早速昨日の続きを踏まえて紹介しよう。

モッツァレッラと野菜のブルスケッタ(4人分)

  1. プチトマト10個を4分の1カットにし、モッツァレッラも同様の大きさ(サイコロ状に小さく)切る。玉葱4分1個をみじん切りにし水にさらす。ルッコラは洗って荒く刻む。(3、4cmほどでよい)
  2. 上記の材料を全てボールに入れ、オリーブオイル、塩、乾燥オレガノで和える。
  3. パンを1cmほどの薄さにスライスし、オーブンかトースターでかりかりに焼く。パンは食パンでなければ何でもよい。固めのもの、バゲットなどが合う。
  4. 熱いうちに具をのせて出来上がり。

ブルスケッタというのは、薄くスライスしてカリカリにやいたパンに様々な種類の具をのせたもので、家庭では勿論殆どのリストランテ、オステリア、ピッツエリアに前菜として存在する。これにワインを合わせ、さあディナーの始まりというわけだ。とにかくこれで、ニッポンでもモッツァレッラチーズを絶対買おうという気になるってもんである。

前置きはさておき、主役のジェラルドの女友達を紹介しよう。ペルージャ出身の28歳OLシモーナ、長いチリチリの黒髪にやはりバッチリのアイメーク。な、長いぞマツゲ、と見とれること数分。非常に、何と言うかボリュームのある肉感的なひとだった。それにしても臭い。何がというと西洋人特有のキツメの香水である。個人的には香水が苦手で出かけるときも殆どつけたことがないから、わたくしの隣にお座りになられたときには逃げたくなるほどの臭さだった。

ディナーが始まるとともに、ヨーロッパチャンピオンズ・リーグ(サッカー)が始まり、何とユベントス(イタリア)対レアル・マドリッド(スペイン)の大試合がTV放映されたのである。ユベントスファンのアンドレアとジェラルドはディナーをしながらも目は試合を追い、ミラノファンで同じくサッカー好きのシモーナも試合に夢中だった。結果ジェラルドのディナーはサッカーと融合され、時に凄まじい応援や罵倒とともに進んだのである。

サッカー選手がブラウン管にアップになるたびにシモーナはわたくしに「ねえ、ザンブロッタ、好き?格好いいよね」「嫌い」「えええ?ザンブロッタは皆素敵だって言うよ?じゃあ誰が好きなの?」「うーん、好きな選手とか特にいないんだけどしいていえば、モンテッラとかカンナバッロとかジダンとか。」「・・・変わってるのね」とサッカー選手についての質問攻めだった。

それはいい。わたくしが推測するに、ジェラルドはシモーナを気に入っているはずである。初めてディナーに招いたといっていたが、ディナーの間中見ていて可哀想なくらい落ち着きがなかった。「僕はここ数年5人分もご飯を作ったことがなかったんだ。マックス3人分で、5人となると塩ひとつとってもその適量が分からなくて。唐辛子になると、もう本当に迷ったよ。5人のうち1人でも辛いのがだめな人がいたら申し訳ないから、少し控えめにしたつもりなんだけど・・・」と誰も何も言っていないのに彼の釈明会見は続いた。しかもシモーナは彼の思惑に気づいているのか気づいていないのか、その気があるのかないのか、まったくもって堂々としていた。
例えばジェラルドは常にシモーナを気にしていて「ワインいる?」「パスタもう少しいる?」「ブルスケッタは?」と聞くのだが、その都度「いらない、いらないってば!何してるのよ、もう注がないでよ、アル中じゃあるまいし。」(彼女は結局スプマンテを1杯飲んだだけだった)「やめて、やめて!もう盛らないで、こんなに沢山食べられない。わたしを太らせる気?!本当にもう要らないの!!」凄まじい否定に合うのだった。それにしても彼女は本当に少し、鳥の餌ほどしか食べなかった。

「フルーツいる?オレンジ?洋ナシ?リンゴ?何でもあるよ」とジェラルド。「要らない。食後のフルーツは消化によくないから」またもや却下された。しかも食後のフルーツがよくないとは、シチリア出身ジュセッペを含め、アンドレアもジェラルドも南イタリア出身であるから山盛りのフルーツは一日の生活で必須なわけである。食後のフルーツは消化を促すと信じて疑わない彼らはさすがに「・・・・。」と不信な面持ちであった。「本当なのよ、わたしのおばあちゃんもお母さんも皆そう言うんだから。特にお腹でパスタと混ざるとよくないって。フルーツは体にいいけど、食後は絶対だめ。だからわたしは午前中に1回、午後に1回仕事の合間にフルーツを摂るようにしてるの。」

ジェラルドは薬学部である。食後のフルーツが消化によくないなんて絶対ありえないと思っていただろうに「いや僕は・・・それは聞いたことがないし実際そうとは思わないけど・・・まあ何らかの化学変化が起こりうるかも、かもしれないな。」とスーパー弱気な返答をしていた。まあこの時点でわたくしの中でシモーナは、翌日のブログに200%登場するであろう重要人物になっていたので、わたくしは彼らの会話を聞き漏らすまいと必死であった。

そもそもディナーが始まるとき、それは夜の21時だったのだが、シモーナは「わたしは実家暮らしだから夕飯は毎日20時に食べるの。今日は既に1時間も遅れてるわ」」とおっしゃった。可哀想なジェラルド。

ところで20代30代のイタリア人女性のわたくしのイメージは「食べない」「料理ができない」である。勿論全員ではないが、ダイエットに固執された女の子がとても多い。食生活を根本的に直すことから考えないと、目先のパスタを減らしたところでどうにかなるものではないのだが、「わたしを太らせないで」とか「こんなに食べられない」という発言は本当によく耳にする。だからイタリア人男性はニッポンジの女の子(勿論イタリアに滞在していることが限定だが)がモリモリとお皿を全て平らげるのを見て感心されることが多い。アンドレアですら「イタリア人の女の子はダイエットのことばかり言ってる」と話すほどだ。まあこういった状況はニッポンでも少なからず同じなのかもしれないが。

さて最後になるが、私たちがディナーを始めたのは21時だった。が、22時半にはシモーナは「わたし、そろそろ行かなくちゃ。ごめんなさいね。友人とサルサ踊りにいく待ち合わせしてるの。」とお帰りになってしまったのである。か、可哀想なジェラルド。