インターネットポイントオープンなるか、シモーネ。

昨夜突然わたくしのノートパソコン、長年愛用(しすぎだ)していたIBMシンクパッドが天に召された。昨年も一度ご臨終されたのだが、インターネットポイントを経営していた知人のトニーの看病により精気の復活をされ、昨夜までは何とか元気に生きていたのに。しかしこのご時世に何とウィンドウズ98しかもイタリアバージョンが搭載されており、ROMドライバもなく、充電は2分ともたず本当に哀れな最期であった。それにしてもわたくしの唯一の電子機器がなくなった今、どうやってこのブログをアップデートしていくのか、目下の問題である。さらに2年間つけ続けたエクセルの家計簿も全てなくなってしまった。

ところで昨夜(まだわたくしのシンクパッドは生きていた)わたくしが家で遅いランチをとっていると、友人のシモーネから電話があった。シモーネとはそう、バール・アルベルトの隣でタバコ屋を営んでいたあのシモーネである。(シモーネについてはこちらを参照http://d.hatena.ne.jp/barmariko/20050118)覚えていらっしゃるだろうか。彼が10年間働いたタバコ屋を譲渡したのは昨年末のことだった。その後心気漲る新しいシニョーラがタバコ屋としてやってきたのだが、やはり事業は上手くいかず、何とシモーネは本日2月29日月曜日からめでたくタバコ屋復帰となったのである。「やっぱりガリバルディ通りのタバコ屋は俺しかできねーよ」と意気揚々と再登場したのであった。

さてシモーネが何用でわたくしに電話をかけてきたのかというと、それはこんなことだった。「マリコ、俺が明日から職場復帰するって言っただろ?実はその件なんだけどよ、タバコ屋店内に、家庭雑貨やキッチン雑貨を売っていたスペースあっただろう?あそこを全部一掃してテレフォン・センター兼インターネットポイントにしたいんだよ。やっぱりああいう雑貨類は売るのが難しいよ。で、意見を聞きたくてさ。何かアドバイスしてくれよ。」

確かにシモーネのタバコ屋には、雑貨を販売していたスペースがあった。が、猫の額ほどの狭さである。ところ狭しと並んだ鍋、皿、エスプレッソのカップ、包丁、チーズおろし、お盆・・・どれもこれもチェントロとは思えない安さだった。というのも彼はペルージャ郊外にある問屋へ直接買い付けにいき、そこに少しの利益を加えただけの破格の値段で売っていたからである。しかし残念ながらあまりに狭いそのスペースでは在庫数にも限りがあり、タバコ屋というあまりに地味な店構えで実は奥で雑貨を売っていると気づかれ難く、つまり殆ど住民に知られずひっそり販売していたのだった。利益など上がる訳もなく、そこで心機一転そのスペースを利用してフォンセンター兼インターネットポイントはどうかという話が出てきたわけである。

ペルージャでインターネットポイントやフォンセンターはまだまだ機能する商売である。というのもご存知ペルージャ外国人大学やペルージャイタリア人大学があるためである。毎日毎日新しい外国人が到着し去ってゆく。チェントロに住む住民の殆どは学生であるペルージャ。更にインターネット環境がある家など極々僅かである。正確には電話線はきているためインターネット環境を整えることは物理的に可能なのだが、大家は家を貸す時点で電話を外してしまうことが多く、電話や電話線そのものの存在はない。まあ今時イタリア人も外国人も学生で携帯電話がない人もいないから、それはそれでよいのであろう。

勿論電話線がきていない家も多くある。ちなみにこの場合は悲惨である。わたくしの知人は仕事でどうしてもインターネット常接環境が必要ということで電話線工事から依頼したのだが、依頼FAXを送ってから工事が終了するまでに半年かかったそうである。まあもうこんなことでは驚かないが。

結果殆どの学生はチェントロに点在するインターネットポイントを利用する。「5ユーロ(700円)で5時間」「10時間で10ユーロ(1400円)」等がペルージャの相場であろう。更にペルージャのように外国人の多い街では、イタリア語のみ使用可能のインターネットポイントは成り立たない。英語、スペイン語ポルトガル語、フランス語、ドイツ語、アラブ語、日本語、中国語、韓国語・・・一台のパソコンで何ヶ国語もの言語が使用できねばならない。超重要顧客の日本人のために当然日本語は必須である。例えば今わたくしがこれを書いているインターネットポイント、この端末は「イタリア語、英語、日本語」が使用可能言語である。

しかし。わたくしたちが満足できるインターネットポイントというのはそうそうあるものではない。日頃通っているペーサ門から少し入ったところにあるインターネットポイント。ここは端末の数が多く、お値段も手頃であり日本語も使用できるのだが、何しろ端末が古い。ネットワーク工事などをやっていても平気で営業してしまう為、時々異常に遅いときがある。ホームページで1ページ進むのに5分かかったりする。更にFDドライバやROMドライバが故障している端末も多い。ニッポンのオフィスでLAN接続の速度に慣れてしまったわたくしには、この遅さは耐えようのないストレスである。しかも1秒1秒お金は払わねばならないのだから。

にも関わらず、このペーサ門近くのインターネットポイントは流行っている。いつも人で溢れておりニッポンジンの数も多い。何故か。簡単である。端末の数と同じだけ、端末のないケーブルだけの席が用意されているからである。勿論自分のノートパソコンを持ってきて使用したい顧客のためである。25席は端末付き、およそ20席は端末なし、といったところだ。以前ガリバルディ通りにあったトニーのインターネットポイントは2年前はニッポンジンも多く流行っていたのだが昨年潰れてしまった。何故か。ノートパソコンを使用できるケーブルのみの席が2席しかなかった為である。2年前と現在では、留学の際にノートパソコンを持参してくる学生の数が倍増しているのが現状なのだ。ニッポンジンに関して言えば、当たり前の留学条件となっている。

シモーネは言った。「インターネットポイントといってもよ、大騒ぎするアラブ人なんかの溜まり場になるのは御免なんだよ。やっぱりニッポンジンが来てくれてお品の良い場所にしたいんだよ。」「それじゃあポイントはね、端末を全席に揃えないことだよ。ここは狭いからまあ6席とれていいほうでしょう。だったら端末は3台にして残りの3席はケーブルだけにしなきゃ。今やニッポンジンは皆自分のノートパソコン持参してるから。」

「なるほど!俺はパソコンのこと何にも分からないからよ、本当に困ってるんだよ。」「じゃあ尚更ノートパソコン持参の顧客を取り込んだほうがいいよ。インターネットポイントにある端末ってお客の勝手し放題だから、変なものインストールされてたりダウンロードされてたりで壊れることも多いし、フリーズしちゃうことも多いし。そんなときシモーネ、あなた対処できないでしょ。顧客が自分たちのPC持ってくるなら、それは彼らの全責任になるわけだから、シモーネにいちいち質問もこないだろうし。」「そ、そうか!!!そりゃあ有難い。」

「しかも6席分に3台の端末でいいなら、単純に初期投資削減にもなるよ。」「それが一番デカイな。マリコ、俺が店オープンしたら皆に広めてくれよ、頼むよ。」「勿論。あと照明も大事。明るすぎる店内は目に悪いよ。あと個人的には音楽もあったらいいなあ。でもジャズとかボサノバとかをボリューム下げて微妙に聞こえるくらいで。」シモーネのタバコ屋はガリバルディ通りのバール・アルベルトの隣であるから、当然わたくしの家からも非常に近い。もしシモーネがこれを実現してくれたら喜んでわたくしは第一顧客になるだろう。だから少しでも自分好みに色づけしようとわたくしも色々吹き込んだ。

更にシモーネのタバコ屋は朝8時オープンである。通常どのインターネットポイントも朝11時営業開始であるから、これはひとつのメリットになる。しかも外国人大学から徒歩1分という恵まれた立地。(どうせならタバコ屋もやめてしまえ、と言いたいところだが。)まあひっそりと家庭雑貨を売るよりは、はるかに儲かると思われる。頑張れシモーネ。わたくしは心から応援しております。