アレッハンドロさん宅に招かれる

barmariko2006-02-19


わたくしの大事なお友達、ニッポンジンの顔を持つペルー人のアレッハンドロさん。(ヘッダでも紹介してますが、もっと詳しく知りたい方はどうぞこちらへ→アレッハンドロさんの行きつけバール
現在彼は、ペルージャから車で30分ほどいくベットーナという小さな古都(写真右)に、奥さんのスーザンと住んでいるのだが、わたくしがペルージャへ帰るたびに早速車を走らせて会いにきてくれる。そうして半日ウンブリアの街を車でゆっくりドライブし、最後にスーザンの作る美味しいご飯が待っている彼らの家へと招待してくれるのである。


アレッハンドロさんは超お喋りである。こちらが無理やり止めなければ、永遠に話続ける。ネタの引き出しが幾つもあって、なんと10代の頃の恋愛話にまで遡るのだからさすがである。(彼は今年65歳である)今回も、お互いの近況報告を一通りしあった後、アレッハンドロさんによる思い出話が始まった。

「僕がまだ20歳の頃だった。まだペルーに住んでいたんだけどね、僕には恋人がいたんだ。とはいってもまだまだ僕らはプラトニックで、今でもはっきり思い出すことができるくらい、ピュアで美しい関係だった。彼女はペルー在住の中国人で、僕は何というか・・・一目ぼれだった。でもそこには大きな問題があって、つまり僕の両親が大反対だったんだ。想像してみて、今から45年前を。いくらペルーに住んでいたからといって、僕の両親は日本人だからね。僕が中国人の女の子と付き合うのだけは許してくれなかったんだよ。僕は長い間悩んだんだけれど、最終的に親に逆らうことができなかった。何の理由も説明せずに、彼女に別れを告げたんだ。今でもあのときの、彼女の「信じられない」という表情が僕を苦しめるよ。僕は最低な人間だった。1秒前まで彼女は僕らの将来を信じていたんだから。未だに忘れられないんだ、あの「裏切られた」って僕を責める眼差しが。」

45年経った今も、アレッハンドロさんは遠くを見るようにそんな話をする。ハンドルを握りながら、海を越えたイタリアで。かと思えば1分後にはオリーブオイル談義に花を咲かせるのだ。「僕は典型的なイタリアジンみたに、オリーブオイルやワインに薀蓄をたれるのは嫌だけど、でも何だかんだいって最終的には、ここウンブリア州のオリーブオイルが一番と思うようになってしまったなぁ。やっぱり慣れってあるよね。僕は今でもペルージャのとあるオリーブ農家から、直接購入しているんだけど、他のオイルを味見するとすぐ分かるよ、違いが。あの喉を通るときのピリピリ感がたまらないね。実はね、これスーザンには言ってないんだけど・・・オリーブオイルの講座に通ってみようかと思ってるんだ。不思議なくらい、興味が湧いちゃって。」

その後も、「アメリカで働いていたときの上司の話」「娘夫婦がイタリアへ遊びにきたときの話」「近所のバール店主、ルーチョの具合が悪い話」「マラドーナを見たときの話」と、まるで20代30代の女性のように、話のネタは尽きることがない。正直これは相当なボリュームである。もしわたくしが疲れていたり、寝不足だったりしたら、間違いなく消化できない。また、既に目的地へ到着しているにも関わらず、話が終わらないといつまでたっても車から外へ出してくれない。わたくしは駐車場で、いつやってくるのかわからない話の「結末」を首を長くして待たなければならないのである。

さて、長い長い道中を経て、アレッハンドロさん邸へ着いたのは夕方18時だった。すっかり日は暮れて、あとはスーザンの作る美味しい夕飯を待つのみ。さてここで、アレッハンドロさん邸をご紹介しよう。玄関を入ると、すぐ横にあるのがスーザン自慢のキッチン。さらに進むとリビング・ダイニング。ちょっと急な階段を昇ると、TVのあるメインリビング。(※ここで食後に30分も喜多郎のCDを聞かせられた)その隣にはゆったりとしたベッドルーム。さらに上へ上ると、あのアッシジの街が見渡せる開放感ある屋根裏部屋。


さて、やはり紹介せねばなりませんね。スーザンの美味しいディナーを。本日のメインは、チキンのクリーム煮。ほうれん草とリコッターチーズのホワイトラザニア、ピーマンソースかけ。インゲンのガーリックマリネ。クルミゴルゴンゾーラチーズの入った具沢山サラダ。

お気づきの方もいらっしゃるだろう。そう、スーザンのご飯はどれをとっても美味しいのだ。しかし。何と言うか・・・結構重いのである。1品1品は素晴らしい。しかし・・・これらを組み合わせると、最終的にとってもヘヴィーになるのだ。例えば。チキンのクリーム煮には当然ながら生クリームがたっぷり使われる。であるならば、同じく重めのラザニアはちょっとつらいものがある。何しろ、リコッタチーズにパルミジャーノチーズが入っているのだから。ここまでクリーム、チーズときたら、わたくしならせめてサラダは超あっさり系にしたい。野菜だけのシンプルサラダ。しかしスーザン的には、このサラダに何故かゴルゴンゾーラチーズやクルミも入ってしまうのである。断固として言うがこのサラダ、非常に美味しいのだ。しかし・・・

それからインゲンのマリネ。チキンもラザニアもサラダもコッテリ系にするなら、ああせめてせめて、インゲンは茹でるだけにするとか・・・。しかしこのスーザンのインゲンは、ガーリックでしっかり濃い味が付いていた。ご馳走になっておきながらわたくしは何と失礼なヤツなのだろう。スーザンは人格者で、料理好きで、素晴らしい。しかしこれが、ニッポン的味覚とアメリカ的味覚の違いなのかもしれない。と真剣に思ってしまうのである。どれもこれも、200%主張した皿たち。

ニッポンジンなら、ちょっと重めのメインを作る場合、副菜は軽めにするだろう。必ず箸休め的な存在が必要なのだ。全てがヘヴィーだと、最終的に食べ疲れてしまう。さて、このディナーの最後に出てきたのは、なんと。超アメリカンなレアーチーズケーキだった。みなさん、ニッポンのお洒落なケーキ屋さんに置いてあるチーズケーキを想像してはいけません。中味がギュギュギュギュギュと詰まった、一分の隙もない濃厚チーズケーキ。美味しいのだ。誰が何と言おうと。しかしながら、このヘヴィーフルコースの後では、拷問に近いものがある。

この後アレッハンドロさんのお喋りが夜中過ぎまで続いた。ディナーの後すぐに車に乗る勇気がなかったわたくしには丁度よい消化タイムだった。やれやれ。ちなみに、アレッハンドロさんもスーザンも実は日々ダイエットに励む身である。もし、わたくしを招待することでこのようなダイエット違反のご飯を作らせてしまったのなら・・・申し訳ございませんでした。