いつからチョコレート嫌いになったの、ジュセッペ!?(前編)

barmariko2006-01-24

UN UOMO A CUI NON PIACE PIU' IL CIOCCOLATO

友人ジュセッペアンドレアの元同居人だ。昨年の夏、無事ルーマニア人の彼女とゴールインし、新婚生活を送るためにペルージャ駅裏のマンションへと引っ越したのだが、相変わらず彼らは仲良しである。ちなみに結婚したのはもうかれこれ半年以上も前なのに、未だに奥さんのエレナはルーマニア暮らしで、今月末晴れてイタリアへやってくるのだ。何故か?ここにもイタリア不景気の暗い影がある。

ジュセッペはシステムエンジニアだが、ここペルージャのような田舎では、いくら彼が優秀でも雇用契約はいつまでたっても時給で働く”契約社員”である。満足のいく(妻を養うことのできる)給料はなかなかもらえない。必然的に妻も仕事を見つけなくてはならない。しかし、女性が飲食店以外で仕事を探すのは、まだまだ難しいのがここペルージャのような田舎である。手に職を持っているひとはいいが、イタリアジンですら仕事がないのだ。外国人にそう簡単に回ってくるほど甘くない。

ということでジュセッペの妻エレナは、ぎりぎりまでルーマニアでの仕事を続け、しかし先に結婚することによって市民権だけは得ておき、いざペルージャへ着いてからスムーズに就職活動ができるようにしたのである。ジュセッペはジュセッペで、かれこれ半年も一人で新居に住み、少しでも貯金をすべく仕事ももう一つ増やし、まるでニッポンジンのように働いている(自称)。「僕はイタリアで、週56時間働く男だ!」と毎日豪語している。愛の力はまことに偉大である。

さて前置きが長くなったが、そのジュセッペが嫁のいない新居に、ランチへ招いてくれた。勿論友人のアンドレアとともに。冬晴れのとっても気持ちのよい暖かな昼だった。初めてのお宅訪問である。早速わたくしとアンドレアは、甘いものキチガイのジュセッペのために、パスティッチェリア(ケーキ屋さん)で山積みのドルチェを買い込んだ。

ペルージャ駅の裏側には、高層マンションが立ち並ぶゾーンがある。年季の入ったものから、ここ最近建ったばかりの新しいものまで様々である。ウンブリアの古都というのは、必ずチェントロ(中心地)が高台にあり、鉄道駅のある低地一帯は当然ながら戦後に開発されたもの。住宅事情でいえば、当然ながらチェントロへ行けばいくほど地価が高くなり、逆に駅付近はなかなかの狙い目となる。しかもチェントロの中世から立ち並ぶパラッツォと違い、近代的な、住むためのマンションが立ち並ぶ。ジュセッペのように車がある人にとっては、賢い選択ともいえる。

道中こんな話をしながら、アンドレアとわたくしはジュセッペ宅に着いた。ドアが開いて、さっそく目に入ったのは、サンサンと太陽が降り注ぐ明るいダイニングキッチン。そして何とも良い香りが漂う。オーブンを使っているらしい。

オトコ一人で暮らすには、あまりに可愛らしい家である。備え付けだったという家具も幸い趣味のよいもので、新婚雰囲気が漂っている。ギリシャを思わせるようなターコイズブルーで統一されたキッチンの棚も、結婚式の写真が並べられた作り棚も、「あんたが選ぶよりよっぽどいいわ」とうっかり口にしそうなくらい、わたくしは気に入ってしまった。

ダイニングキッチンの横には狭いが南向きでとても明るい寝室。そしてその隣にはこれまた南向きで気持ちのよいバスルーム。一つ難点なのは、バスルームの扉が、彼らの寝室にしか向いていないということだ。つまり。遊びにくるゲストたちはトイレを借りるたびに、彼らの寝室を通らねばならない。何故、ダイニングキッチンか玄関に隣接させなかったのか、意味不明である。プライバシーが全く尊重されていない作りが、妙に笑える。

さて。この後ランチタイムが始まる。