イタリア・バール上級編〜カフェ・ドルツォ

barmariko2005-05-30

CAFFE' D'ORZO AL BAR

どんなにイタリアン・バールがニッポンで人気を博しても、セガフレッドが日本全国に進出しても、絶対に上陸しないと思われるのが「CAFFE' D'ORZO(カフェ・ドルツォ)」である。「オルツォ」というのは「麦」のこと。つまり、麦で出来たカフェである。作り方はエスプレッソと同じ、あのマシーンの口にエスプレッソの粉の代わりに「オルツォ」の粉を詰めるだけ。見た目はエスプレッソに近いが、味はぎゅっと凝縮した温かい麦茶といったところか。

イタリアにCAFFE' D'ORZOのないバールは存在しない。どんなバールにも必ず常備してある。大きなバールではこのCAFFE' D'ORZO専用の簡易マシーンを置いている場合もある。とはいえポピュラーな飲み物ではない。これを知らないイタリア人はいないが、これを常飲するイタリア人は僅かである。

例えばバール・フランコhttp://d.hatena.ne.jp/barmariko/20050213)で働いたとき、カフェ・ドルツォを頼むひとは一日に数人だった。バール・アルベルトも然り。しかしイタリアン・バールにおいて、これはなくてはならない要素なのである。

もう少し細かく説明しよう。CAFFE' D'ORZOを頼んだら、まずカップの大きさを指定しなければならない。(値段は一緒だ)「大きいカップ?小さいカップ?」小さいカップとはつまり通常のエスプレッソ用カップのことである。エスプレッソ同様30CCほど抽出して終わり、一瞬で飲みきってしまうサイズである。

しかし何故か一般的に、CAFFE' D'ORZOを頼む客は「TAZZA GRANDE(大きいカップ)」を指定する。エスプレッソと違って麦で出来ている為「体により優しい」「カフェインが含まれない」「紅茶に近い」などの安心感を与えるのかもしれない。少なくともわたくしがバールで働いているとき、「カップはどっちにしますか?」と聞いて「小さいほう」を選んだイタリア人はいない。

昨年の8月、バール・フランコバリスタとしてカフェをいれていると、聞いたことの無い注文がきた。「カフェ・ドルツォにレモンの皮」一瞬意味が分からず(というより見たことがないので想像がつかなかった)ポカンとしていると、客自ら指導してくれた。「これはカフェ・ドルツォの通な飲み方なんだよ。まずレモンの外皮をちょっと剥いて。薄くね、ほんの1センチくらい。それを空のカップに入れて、その中にカフェ・ドルツォを抽出するんだ。こうするとレモンの香りと麦の香りがとてもマッチするんだ」

一番最初にカフェ・ドルツォを飲んだときは、正直美味しいとは全く思わなかった。麦茶やウーロン茶に慣れているわたくしたちには、どうも違和感のある味わいなのである。しかもイタリア人はここにたっぷり砂糖を入れて飲むのだ。だが人間慣れるものだ。2,3ヶ月もすると仕事の合間にカフェ・ドルツォ(カップ大で)を自分で淹れてチビチビ飲むようになった。勿論砂糖なしであるが。

まあいくら海外モノ好きなニッポンでも、カフェ・ドルツォが流行ることはまずないだろう。

(※写真はバール・アルベルトのカウンターでランチ後のカフェを楽しむ教会工事のおじさんとタバコ屋のシモーネ。彼らの辞書に「カフェ・ドルツォ」は存在しない。邪道そのもの、イタリアでカフェといえば100%ピュアなエスプレッソのみと豪語される。)