ある夏の日のヒッタクリ事件Ⅱ〜防犯カメラがあったって?

barmariko2005-05-21

LO SCIPPO DEL GIORNO DELL'ESTATE Ⅱ!"
"c'è una videocamera antifurto sopra il tabaccaio!"
まずはこちら5/20パートⅠをお読みください→http://d.hatena.ne.jp/barmariko/20050520/
その後警察へ行ったのだが、まず病院へ回された。腕のアザと、もしかしたら鞭打ち症状があるかもしれないから、診断書をとってこいというのである。確かに、首がだるくてだるくて仕方なかった。無理矢理カバンを肩から抜き取られたとき、スクーターに体が持っていかれてガクンと首が反り返ってしまったのだろう。2時間待ちで診察をし、やはり2週間の軽鞭打ちと言われた。

その日の夜中ようやく警察で被害届を出すことができたのが、担当の刑事さんは「ペルージャの治安は年々悪くなっている」と言っていた。「夜中とか人気のない場所でというならまだ分かるが、白昼堂々しかも大学の目の前でヒッタクリとは、大胆不敵な野郎だ。分かるか?奴らは腹空かせてるんだよ。薬だよ、薬。ヤクが欲しくてたまらないんだよ、追い詰められてるから何でもするんだ。ヒドイ話だよ。今月に入ってもう何件も被害届でてる。そうそう君の場合は、ただのスリじゃなくて正真正銘ヒッタクリだから、調書の種類も違うからね。」なんかムッとした。第三者のひとが言うならともかく、警察の担当刑事の発言としてはちょっと他人事過ぎないか?ヒドイ話だよ、ってそりゃあんた、こっちが言うセリフだ。しかも彼は「ヴァッファン・クーロ(今畜生)・・・」と低い声で犯人への怒りも露わに調書を作成していたのだが、わたくしにはそれがどうも演技に見えて仕方なかった。

調書作成には非常に時間がかかった。気づかないうちに盗られたわけではなく、ヒッタクリであるから具体的な目撃証言が必要なのだ。「スクーターの色は?形は?ヴェスパのような小型タイプ?」「ヘルメットの色は?形は?」「ズボンは何色?」「シャツは?」「体型は?」「髪の毛の色は?」「肌の色は?」何一つまともに覚えていなかった。そんなもんだろう。一瞬の出来事だったのだから。
と翌日、ヒッタクリ現場になんと防犯カメラが設置してあることに気づいた。それはあるイタリア人の友達が教えてくれたからなのだが、大学の目の前にあるタバコ屋さんの2Fに、あるではないか防犯カメラ。(写真中央の建物1Fがタバコ屋。見えないと思うが看板左斜め上に設置されている)友達は、それが稼動しているなら絶対ヒッタクリ現場を捉えてるはずだから、警察へ再度問い合わせたほうがいいと言った。「しかしさ、この防犯カメラの存在を警察が知らないわけはないんだ。しかもドンピシャで防犯カメラの真下で起こったんだから。まだ明るかったし、ヘルメットで顔はよく写ってなくてもスクーターの種類とか色とか特定できることたくさんあるだろう?でも特にその防犯カメラのことには言及せず、だったんだろ?ったく怪しいよなぁ、イタリアの警察は。働かない、信用できないって全国民から言われても仕方ないんだよ。」

早速他のイタリア人の友達に頼んで、警察へ電話をしてもらったのだが、警察の返事は「防犯カメラ?ああ、そうだね。何かそのカメラから分かることがあればこちらから連絡するから」で終わりだった。ま、分かりきった対応だったのだが、当然盗られたものがその後戻ることはなく、防犯カメラ云々の可能性も露のようにはかなく消え、あれから2年近く経つ。

そう言えばその直後、スペインへ行く資金を貯めなおす為にバール・アルベルトで働き始めたのだった。アルベルトが「それは災難だったねえ。いやあ、僕らイタリア人にとってもスリやヒッタクリってのは起こるんだよ。うちのバリスタのファブリッツィオだってスクーターごと盗られたしな。マリコ、僕には何もしてあげられないけど・・・いや、そうだな、君を働かせることくらいだったら出来るから。盗られた分のお金、せめて家賃の足しにはなるだろう?」客足のない、夏バカンス直前の閑散としたガリバルディ通り(写真のタバコ屋直ぐ左にある細い上り道、これがガリバルディ通り)の小さなバールでこの後に及んで人を雇う必要など、全くないだろうにアルベルトはこう提案してくれたのである。その厚意に甘えることにしたのは言うまでも無い。

※写真は事件当時のものではありません。どうみても冬に撮ったものですがタバコ屋が写っているので掲載させて頂きました。あしからず。