滞在許可証の行方Ⅱ

COME SI PUO AVERE IL PERMESSO DI SOGGIORNO Ⅱ
前号はこちら→http://d.hatena.ne.jp/barmariko/20050513/
あるコックさん修行のニッポンジンの方から聞いた話。「去年1年間はトスカーナにある私立学校で入学手続きしたの。ここは1か月分の学費で1年間分の滞在許可証がおりるから。」
そうかそうか、無事滞在許可証がおりてそれは良かった。「でも今年は同じ学校が使えなくて。だって去年1ヶ月分しか払ってないでしょ?だからもう更新できないの。それをレストランのオーナーに相談したら、彼が別の学校を紹介してくれて。何とそこは入学金も学費もタダなの!」ええ?どうやったらそんなこと可能なわけ?どこに儲けが発生するわけ?タダで滞在許可証あげちゃって、何の意味があるわけ?

「何でか分かんなかったけど、とにかく入学手数料も学費も無しで入学証明書発行してくれて、それを警察に持って行って申請したら、ほんとちゃんと滞在許可証おりたよ。でもさ、後日そこの学校の関係者、うちのレストラン食べにきてた。お金?勿論タダに決まってるでしょ。やっと理解できたよ。うち星付きの地元では有名なレストランで、オーナーがその学校側と仲良しだから成り立ってるんだよ。あなたのレストランで働くスタッフ用の入学証明書くらい出してあげますよ、でもご飯食べさせてね、タダで♪ってこと。」
彼女曰くそういう理由でレストランに食べに来る学校関係者は他にもたくさん見たそうだ。「想像付くけどさ、嫌だなあ、そういう話聞くのは。方や少しでも長く滞在するために学費をきちんと払ってるひとがいるっていうのに。あまりに分かりやすい裏側だよ。」とわたくしは悲しさを隠し切れなかったのだが、「イタリアでの滞在許可証なんて、そんなもんでしょ。」と彼女は逞しく笑っていた。

ここで気になるのは、いくら学校側がタダで入学証明書を発行してあげたところで、この学校が直接滞在許可証を発行することはできない、ということだ。内務省管轄のもと、地元警察(クエストゥーラ)が発行業務の全権利を持つのである。つまり、学校側と警察にも非常にシンプルで特殊な関係があることは簡単に予想が付く。

警察で滞在許可証を申請するとき、必ず窓口でそれぞれの学校が発行する「支払い証明書もしくは領収書」を提出しなければならない。つまり警察側は、どの生徒がいくら学校に支払ったか、何か月分支払ったか、を把握することができる。しかしある特定の学校からの証明書を持参した場合、例えそれが「たった1か月分の学費支払い証明書」であったとしても「一銭も払っていないただの入学証明書」としても、スンナリと1年分の滞在許可証を発行するのである。

世間向けの説明書きはある。ペルージャの、とある美術専門学校。ここも1ヶ月分の学費だけで1年間分の滞在許可証を発行してもらえる。この学校が言うには「この美術コースは最低でも1年間の履修が必要だから。」である。「そうですか、はいそれじゃ1年分ね」と警察は簡単に滞在許可証を発行するというのか?

「きな臭い」ってこういうのを言うんだろう。