全店禁煙イタリア

barmariko2005-02-15


2005年1月10日からイタリア全土で「イタリアが?!」と我々を驚かせるような法律が施行された。全ての飲食店(バール、カフェ、エノテカ、オステリア、トラットリア、ピッツェリア、リストランテ、パブ、ディスコテカ・・・とにかく全て)の店内において喫煙を禁止したのである。もし店内で喫煙者が見つかれば店は多額の罰金を払わねばならない。勿論施行後は常にコントロールの為巡回員が各店を抜打ち検査する。

イタリアと言えばヨーロッパでもスペインと並んで喫煙率が高く、歩きながらのタバコもそれはそれは多いし、マナーもあったものではない。(写真はイタリアのタバコ自販機。タバコ屋さんの店前にあり、タバコ屋が閉店する祝日、平日夜から朝までの使用となる)例えば先日ディスカウント・ストアにジュセッペの車で買い出しに連れて行ってもらった帰り道、途中工事をしている個所があり交通規制のお姉さんが旗をふって立っていた。加えタバコで。と言うのが普通の状況である。バールやパブに行くと空気洗浄機などあってないようなもの、殆ど機能していない為息もできないほどタバコの煙が立ち込め、店を出ると髪の毛や衣服中に匂いが残り、喫煙しない者にとっては地獄であった。わたくしもダウンタウンで朝まで働いていた頃は夜中も3時を過ぎると煙がしみて常に涙を流しながら仕事をしていた記憶がある。

施行前はみんなが「こんなに喫煙率の高い国で、全店禁煙にしたら店は営業していけるのだろうか」「リストランテやトラットリア等食べるのが主流のところはまだいいが、パブやバールでタバコが吸えないというのは致命傷だ」と思っていたし、店のオーナー達は雲行きの怪しい予測のつかない将来に少なからず脅えていた。そして勿論喫煙率の高さが、この施行に対して賛否両論を呼んでいたのだが、1月10日は問題なく過ぎた。どの店でも「禁煙」の張り紙があちこちに貼られ、客も全員それを守った。タバコが吸いたくなれば外へ出て吸う。この寒い中コートを羽織って喫煙者はみんな外へ出る。そのため気の効いたバールやパブは店先に灰皿まで設置している。

「店は客を失った」のか?安易にそう考えてはいけない。施行前は「タバコを吸わない客」を店は失っていたのだから。わたくしも自分がダウンタウンで働いていた頃、友人たちが「マリコを尋ねていきたいのはやまやまなんだけど、あそこは煙が凄いから・・・」と言って足を遠のかせていたのを覚えている。今はこの喫煙しない客たちが問題なく店にやってこれる。そもそも喫煙者だけが優遇されていた昔のほうがおかしい。今は喫煙しない者が優遇され、喫煙者も勿論店にはやってこれる。我慢するか、もしくは吸いたくなったら外へ出ればいいだけのことだ。
施行後にアンドレアとジュセッペとダウンタウンへ立ち寄ると、店内の空気のきれいなこと。アンドレアは喫煙者でジュセッペはそうではないが、二人とも今回の施行には賛成であった。アンドレアは「僕は喫煙者だけど、今回の施行は前向きで非常にフェアな判断だと思うよ。それに人間慣れるからさ、ほら、電車も飛行機も以前は喫煙できたけど今はできないだろう?でも皆慣れたじゃないか。」なるほど、そんなものかもしれない。

次は「大学内の禁煙」を徹底してもらいたいものだ。ペルージャにはペルージャ大学とペルージャ外国人大学の2つがあり、ペルージャ大学はイタリア人向けの普通の総合大学である。更にペルージャ外国人大学の中にもイタリア人向けの専攻がいくつかあり、国際コミュニケーション学科や国際マス・メディア等がそうである。つまり外国人大学は我々外国人とイタリア人で共有しているのだが、イタリア人向けの授業がある日の構内は酷い。何が酷いって2Fや3Fの廊下や階段がタバコの煙でモクモクなのである。廊下は真っ白、当然のことながら喫煙者・非喫煙者問わず外国人学生からの評判は最低である。「何とかしろよ、イタリア人!ペルージャ大学はイタリア人用だからどうでもいいけど、ここは外国人大学なんだからその言動にはもう少し気を付けてくれよ!」とあまりの教養の無さに怒りを隠し切れない外国人学生も多い。

とりあえずこれで店内での煩わしい「もらいタバコ」が完全消滅したということである。(「もらいタバコ率ナンバー1のイタリア」参照)と思ったら大間違いだった。知人が言うには、寒い中店内から出てきて店先に立っている人たちは明らかに100%喫煙者であるから、タバコが欲しいひとはその輪に加わればいいだけのこと。一緒に外に出て「タバコある?」で済むのである。店内で喫煙者を探して歩く必要もない。これではそのうち、夜タバコが切れたらバールやバーの店先へ行けばいい、喫煙者はご丁寧に店先で待っていてくれるのだから、という新手の「もらいタバコ」まで生まれそうな気配ではないか。やれやれ。