欧州選手権2004の反省(しなさい)

barmariko2005-01-15


まさかのダークホース、ギリシャの優勝で幕を閉じたサッカー欧州選手権2004年。唾吐いちゃいましたねー、トッティ。予選落ちしましたねー、イタリア・アズーリ。いいんですよ、意地悪な私はそれを密かに望んでたので。だって醜いんですもん、イタリア。(ごめんなさいね、イタリアファンのかた)

4年前のワールド・カップの時は日本に居て、欧州選手権2004のときはイタリアに居る、或意味私はついてるかもしれない。にわかサッカーファンの私にとって、毎日夕飯を食べながらの試合観戦はここ最近の日課となっていた。しかもここペルージャはとにかく外国人が多いので、欧州選手権参加国の出身者は大体大学のクラスにも揃っているし、ダウンタウンで働けばカウンターにはギリシャ人、ドイツ人、スウェーデン人、イギリス人・・・と勢揃い。応援にも身が入るってもんである。

日本にいるときはJリーグにすら全く興味が無かったのに、流石にヨーロッパ勢の神業のようなプレーを見ると「おおっ!」とため息が漏れる。しかしイタリア語が多少なりとも分かるようになった今、欧州選手権は私にとってただのスポーツ観戦ではない。試合中の実況中継やイタリア選手のボヤキ、ツブヤキ、叫びが分かったときの自己満足感、試合後に朝までテレビ放映されるサッカー番組のくだらなさ、まさにイタリアという国を痛感する場、欧州選手権

この朝まで放映されるサッカー番組には数人のスポーツジャーナリストが登場し、試合の分析と予測を・・・全くしない。それぞれのジャーナリスト(自称)は、当然ながらセリエAのローマファンだったりACミランファンだったり、ユベントスファンだったりする。それは構わない。しかし彼らは試合の分析そっちのけで、自分の支援するチームの選手を試合に出せ出せの一点張り、何か問題があると全てそれはトラッパットーニ監督の責任とするのだ。(それにしても今回イタリア内でのトラパットーニ監督批判は凄まじかった)
デル・ピエロを何で途中交替させるんだ!」「ザネッティを出せ!」「トッティだ!」これでは私が働くダウンタウンのカウンターで繰り広げられる、酔っ払いによるサッカー談義と何ら変わらない。
彼らがジャーナリストである必要性は全くない。目に焼き付いて離れないシーンが一つ。明らかにローマファンのジャーナリスト、推定60歳くらいだろうか。トッティ唾吐き事件をミラノファンのジャーナリストが批判すると、「分かっている。彼の行為は国際試合でやってはならない、軽はずみで愚かなものだった。しかし彼には、今後待ち受けているであろうマスコミからの攻撃に、どうにか頑張って絶えてもらいたい。」って何だそりゃ?彼の愚行を一応認めたはものの、最後の一言はどうみても、いちローマファンとしての、いちトッティファンとしての個人的主観的励まし文句ではないか。

流石にこの後間一髪いれず他のジャーナリストから「おい、お前それは論点がそれてるだろう!」と刺されまくり、この攻撃に逆切れしたこのローマファンジャーナリストは「もう君らとは喋らない!」と子供のようにむくれてしまったのだった(推定60歳である)。勿論その3秒後には論争に血気盛んに加わっていたが。喋らないって言ったくせに・・・

人の話を聞かないイタリア人。
主観だけで討論をするイタリア人。
討論に結論を求めないイタリア人。

普通5人のジャーナリストがこの番組には参加するのだが、5人が5人とも一斉に感情剥き出しで叫び出すわけだ。番組を見てる私たちは何も聞き取れない。司会者は何をするかというと・・・あおるだけ。女性の司会アシスタントは・・・胸もオシリもピチピチの裸に近いようなコスチュームで、「ただ今トッティの行為に対する皆さんのご意見を収集しております。トッティを指示する方は○○番へ、指示しない方は○○番へお電話ください。お待ちしていま〜す」のワン・フレーズを言うだけ。

ちょっと話がそれるが、大学の女性教授が以前授業中に、このイタリアのマス・メディアにおける女性軽視について突然怒りをぶちまけたことがあった。男性は番組中、それがお笑い番組であっても芸能番組であっても歌番組であってもそれなりにきちんとした格好をするのに、それを補佐する女性のあの格好は何だ、知性の欠片も感じられない、男性は知性を売るのに同じ番組内で女性はなぜ性を売らねばならないのか・・・確かにヨーロッパにおいて、イタリアのテレビ番組の低レベルさは際立っている。らしい。というのも私が他国のテレビ番組を知っているわけもなく、スウェーデン人の友達、ドイツ人の友達、イギリス人の友達たちがそう言うのを聞いているだけだから。とりあえず女性の肌露出度がヨーロッパ一であることは間違いないらしい。

話を戻そう。プリプリの女性司会者が電話番号案内をしていた国民のトッティ支持投票の結果、驚きである。「指示する 45% 指示しない 55%」
国際試合で相手選手の顔に唾を吐いた、そこに何か妥当な理由が存在するとでも言うのか。トッティは馬鹿だった、許される行為ではない、でいいではないか。しかしイタリア人の半分はその後に「でも国民的英雄だから」を付加するのだ。

最終的にトッティは3日間の試合出場停止を言い渡されたが、最初彼の弁護士は1日のみの出場停止処分を主張していた。何故なら。唾を吐いた行為は審判も見ていなかった、TVにも写っていなかった、唾を吐かれた当人とトッティを試合の間中写していた相手国の言わばトッティ専用カメラだけが見ていたのである。このトッティ専用カメラを、トッティ弁護士は「プライバシーの侵害」として位置づけ、出場停止は1日にしてくださいよ〜と言っていたわけである。(勿論他にも理由は挙げていたが、その一つとして)こんなの、論点を摩り替えているだけだ。

結局イタリアは早々に敗退したが、その直前まさに後一試合で勝ち進めるかどうかが決まるというシビアな状況で、突然マスコミを沸かせたのが、イタリア・アズーリの一人ビエリ選手の記者会見。欧州選手権中にビエリと他の(誰だったか忘れた)選手との仲違いについて、マスコミが面白おかしく取り上げたらしく、それについてビエリが反撃に出たのである。

「僕は君たちの為にプレーするのではない、自分の為にプレーしている。だから僕のプレーについて君たちが何を書こうとも全く興味がない。しかし、プレー以外のところで全く身に覚えのないことを書かれるのは不当だ。」等と怒りをぶちまけた。日本でも頻繁にお目にかかる光景、その昔中田もそう言い放った。しかし何も、こんな欧州選手権のこんな大事な時期にそんな暇なことしなくても・・・。案の定あの朝までサッカーテレビはこの会見について早速議論、いやケンカを始めていた。あれはスポーツ番組ではない、ただの芸能番組だ(って誰に文句言ってるんだろう)。

今回の欧州選手権中、早々に私のイタリア応援熱が冷めてしまったのは事実である。だって。サムすぎる。トッティが唾を吐き、ビエリが記者会見し、そしてイタリアが早々に負けてしまった後も、イタリアで流れる欧州選手権のTVコマーシャルからトッティが外されることはなかった。彼はそんなに英雄なのか・・・誰か教えてください。