突然ですがイタリアからの第一報

・・・SONO IN ITALIA!

残暑お見舞い申し上げます。
皆様ご無沙汰しております。突然ですがイタリアへやってきました。短い短いバカンスですが・・・美味しいもので始めて美味しいもので締めたいと思っています。が、そうはなかなかさせてくれないのがイタリアです。

ローマのフィウミチーノ空港、出国手続き所での長い列。今に始まったことではないが、明らかにおかしい。EU圏外用の出口3つのうち1つが完全にストップしている。恐らく誰かパスポートに問題のあるひとでもいたのだろう。幸いにもわたくしの列はどんどん進み、約10分でわたくしの番となり、そして・・・隣りの全く進まない列の源が目に飛び込んできた。

ストップの原因は、若い女性。見た目からすると多分ロシア人。ブロンドの長い髪、スラリと伸びた長い足がよく見える超ミニスカート。旦那なし、子連れというのが、さも訳有り気な風合い。ここまではいい。許せないのが、出国手続き担当の2人のイタリアジンが、彼女に対してしていた質問の数々とそのニヤニヤ顔。「へぇ、チーナ(中国)にもいったの?楽しかった?何してたの?」「うーん、楽しいとも楽しくないとも・・・まあまあね」「チーナのどこ?」「ペキーノよ(北京)」「イタリア語上手だね。勉強したの?」

完全にお喋りモードに突入しているではないか。1人に15分もかけているなんて、これはもしやパスポートに問題があったのかと思っていたが、どうやらそうではないらしい。尋問ではなく、これは完全にCHIACCHIERARE(=おしゃべり)である。しかも相手を限りなく性の対象として見ているその態度と視線、下心が最低である。しかもこの2人のイタリアジンのうち1人は両肘をカウンターについて、だらしなく立っており、「ここはバールのカウンターか!」と思わず突っ込まずにはいられない。

以前にも書いたことがあるのだが、イタリアにおける東欧・ロシア人女性のイメージはあまりよろしくない。勿論、優秀な学生や就労者だって山ほどいるが、その一方で性を売る商売、偽装結婚・・・問題はいろいろある。とはいえ今日のこの出国手続きカウンターでの状況は、見ていて気持ちのよいものではない。ていうか、お前らおかしいだろう、それは!80%の割合で、彼らは彼女に携帯の電話番号を聞いていたと思う。

公共の場で、完全に公務を忘れて(公務の範囲内だと絶対に言うだろうが)・・・ローマのフィウミチーノ空港で、わたくしは嫌な思いをしなかったことがない。しかも、そんなことで列がストップしているとは露も知らない、ニッポン人客たち。哀れすぎる。

チキンソテーが余ったら。

barmariko2006-08-04


簡単そうでなかなか思いつかなかったこの方法。スペイン南部のムルシャという街に住む、友人カルメン宅に滞在していたときに、残りモノでパッパッと作ってくれたのがこれ。カルメンは日頃はロンドンで働くOLなのだが、これは職場の同僚から教えてもらったレシピなのだという。「イギリスの食事は本当に不味い」といつもこぼしているカルメンも、「このマスタードソースだけはまあまあね」と一応認めているようだ。まあ言ってみれば非常に分かりやすい味で、ちょっとアメリカンな気もするが。

彼女はチキンの丸焼きの残りを使っていたが、胸肉の淡白なソテーや、いわゆるもも肉を使ったチキンソテーの残りでも十分応用可能である。
茹でたジャガイモを加えたらますますボリュームアップ、パンとワインで(最後の晩餐なみに必須である)立派なサラダプレートが出来上がる。暑いこの時期なら、白は当たり前として微発泡の赤、例えばランブルスコ等もお勧めだ。

余りもののチキンサラダ(2人分)
材料:チキンソテーの残り(今回は胸肉ソテーの残り)、ジャガイモ1個、レタスやクレソン適量、プチトマト、オリーブオイル、粒マスタード、乾燥オレガノ、塩、胡椒

  1. チキンソテーの残りを食べやすい大きさに手で裂く。
  2. ジャガイモは丸ごと茹でて、角切りに。
  3. オリーブオイル、粒マスタード、乾燥オレガノ、塩、胡椒を混ぜてドレッシングを作る。好みでワインビネガーを加える。
  4. 1,2とサラダの具を混ぜ合わせ、3のドレッシングをかけたら出来上がり!

ちなみにこのレシピを教えてくれたカルメンはこんな子だ↓非常に肉感的な悩殺ポーズだが、スペインの夏の海岸では至って普通である(笑)ちなみに海岸でのノーブラも、全くもって普通である。カルメンがかろうじてブラを付けていてくれて、助かった。(でなければ掲載できなかった、笑)やれやれ。


実はこの時彼女は妊娠していて、数ヵ月後にはこんな写真も送られてきた。

そうかカルメンもついにマンマか。地球の反対側で、彼女がこのチキンサラダを子供に食べさせる日もそう遠くはないのだろう。

イタリアジンは洗濯&アイロン好き?

前から言及しようしようと思っていたこと。それが「イタリアジンは洗濯&アイロン好き」である。好きよりマニアに近いだろう。最初はわたくしの周りのイタリアジンだけかと思っていたのだが、やはり違う。統計的に見て、ニッポンジンより断然多いのである、洗濯オタクやアイロンオタクが。

例えばわたくしの最後の同居人ロセッラ(登場人物参照)。彼女は本当に凄い。洗濯は勿論毎日、バスタオルやスポーツタオル等も一日おきに洗う。そして干している時間が異様に長く、曇りや雨で室内干しにしていても、絶対にそれでは終わらない。太陽が出るのを1日でも2日でも待ち、光がさすと同時に洗濯物を全て外に出す。さらにこだわっているのは洗濯洗剤。恐らくニッポンジンに比べて殆どのイタリアジンがそうなのだろうが、彼らは「香り」が大好きである。洗濯物は「IL BUCATO PROFUMATO(イル・ブカート・プロフマート=いい香りの洗濯物)」でなければならない。必然的に、洗濯洗剤の殆どが「バラの香り」「スズランの香り」だったり、特に明記していなくともかなり強い石鹸の香りが付いていたりする。(結構はまってしまう香りだったりする)

ロセッラはこう言う。「わたし、香りマニアなのよ。洗濯物を部屋に干すと、洗剤のいい香りが部屋中に広がるじゃない?それに癒されるのよ。だから一度部屋に干してから、外に出すのが好きなの。」確かにロセッラの部屋に一足踏み入れると、ぷーんといい香りが漂う。

わたくしたちの家には4畳ほどの洗濯部屋が別階にあって、そこには洗濯機と物干し竿と・・・それからロセッラの各種洗剤がずらりと並ぶ。白い洗濯物用、カラー洗濯物用と分けて使うのは当たり前、びっくりするのは柔軟剤の多さである。ロセッラ曰く「柔軟剤はやっぱり香りで選ぶ」のだそうだ。新商品が出たらとにかく試す。

洗濯が終わったらそこがまた始まりである。何のって、アイロン掛けの、である。シャツやズボンにアイロン掛けをするのは勿論分かる。しかし彼女のそれはシーツや枕カバー、Tシャツ、そして何とパンツや靴下にまで及ぶのだ。彼女が珍しいのではない。イタリア全土にその風習は見られるのだ。イタリアジンの彼氏を持つ外国人の女の子たちが口々に言うのはこれ。「信じられない、わたしの彼、パンツにまでアイロンかけるのよ!」

ロセッラは女性であるからまだ分かる。しかし若い男性だって同じ。基本的にマザコンが多い国であるため、①マンマがいつもやってくれていたからといって、自分では何にもできない男性と、②マンマがやっていた通りに洗濯・アイロン掛けを行う男性と極端に分かれるのが面白い。

従ってイタリアは、ニッポンでは考えられない頻度で、洗濯・アイロン掛けの才能がある(というかコダワリがある)男性に出会う国といえる。ペルージャ滞在1年目のルームメイト、ローマ出身のエミリアーノ(当時21歳男性)も然り。洗濯は1日おき。(わたくしは週1回だった)アイロン掛けほどストレスが溜まるものはないとこぼしながらも、シーツにも枕カバーにも、さらには真っ白なブリーフにもアイロンを掛ける。アイロンがピシッとかかったものに囲まれて育っているため、そうじゃないと気持ちが悪いと言っていたのを思い出す。

ベッドに1回ゴロンと横になったら、シーツにはシワができるのに・・・と思ってしまう怠惰なわたくしには到底無理な習性である。パンツのどこにアイロンをかける部分があるのだろうかと真剣に考えてしまう。ちなみにある別のイタリアジン友達は「洗濯物を干すときに洗濯バサミでパチンと止めるだろ?その跡が残っちゃうから、アイロンかけて消すんだよ」と言っていた。

いたいた、もうひとり。親友のアンドレア(登場人物参照)、彼も洗濯・アイロンマニアである。「こんな仕事嫌いだ」と言いながら、マンマがやってくれていたスタイルを、一人暮らしになっても変えることができないという。ロセッラと同じく、一日おきに洗濯は色別に行い、柔軟剤は必ず入れ、全てのものにアイロン掛けをする。そもそも一人暮らしで一日おきの洗濯というのは、むしろ難しい。色別に分けたら1回1着になりそうなものだ。不思議である。

ニッポン大好き!なブラジル?

ルームメイトのカリーナはイタリア人の父とブラジル人の母を持つサンパウロ出身のハーフである。23歳でサンパウロの大学を卒業し、イタリアはペルージャへとやってきた。父親はサンパウロで開業医、つまりブラジルにおいて相当な裕福層といえる彼ら。サンパウロの実家には当然ながらお手伝いさんやプールといった、ニッポン人の我々からするとまるで映画の世界のようなアイテムが全て揃う。

わたくしはカリーナが大好きである。頭の良い女性で自分の意見をしっかり持ち、裕福層出身であるにも関らず「親に迷惑をかけたくない」と生活費は全てアルバイトで賄っている。両家のお嬢さんがバッソイオ(お盆)にビールをのせて毎日パブやバールを走り回る。正直見た目はお嬢さんとは言いがたい。ラテンのリズムで生まれ育った彼女は、おっぱいが半分見えるんじゃないかと心配したくなるような腹出しキャミソールを愛し、お肉がはみ出ようがパンツが見えようがお構いなし。あそこまでいくともう何も言えない。そういうものかと妙に納得してしまう。根本的に楽観主義でとにかく明るいし、同居人としては満点な女性だった。

カリーナは和食が大好きで、わたくしが家で海苔巻きを作るというと毎度毎度大喜びし、ペルージャに住むほかのブラジル人友達を呼んでくる。「マリコが寿司作るから、うち来ない?」その電話で集まってくるブラジル人、というのも凄い。そんなに寿司好きなのか・・・「世界で一番寿司が好き!ワサビの香りがたまらないのよ〜」「和食はヘルシーだしね!サンパウロで寿司屋が何軒あるのか、もはや誰も把握してないよね。ほんと、凄い数よ!」「ペルージャで寿司が食べられるなんて幸せ〜♪」「しかもニッポン人が作るなんて!」「持つべきものはニッポン人の同居人ね!」そ、そうなんすか?

カリーナの親友のある女の子は、わたくしが寿司を作るというと「準備が見たいから早めに行ってもいいか」と聞いてくる。すごい情熱である。メモを片手に酢飯の作り方を凝視し、「せっかくだから自分で海苔巻きやってみたら?」と言うと「え、えええええっ!本当に!わたしが巻いてもいいの!?信じられない、人生初のわたしの寿司よ〜!」と大騒ぎ。泣き出さんばかりの大興奮である。「こうやって具をおいて・・・一気にたたみかけるの。ゆっくりやると崩れるから気をつけてね。」「わ、わかった」あたかも神聖な儀式かのようにふるまう彼女は、もはや寿司の信者だった。当然ながら自分で巻いた作品を、何枚も写真におさめ、「マリコ、有難う!本当に有難う!」と手を握る。サンパウロに残っている彼女のお姉さんも和食にほれ込んでいて、なんとカルチャースクール「和食教室」へ通っているらしい。

ところでサンパウロ和食屋さんで彼女達は一体何を食べるのだろう?「やっぱり寿司。これは絶対。それからテンプーラね。あの天ツユがたまらない〜。あとはお魚のホイル包み焼き。」ホイル包み焼き・・・?わたくしたちにとっては特に基本の和食というわけでもないが、ある意味どの国でもできる便利な調理法かもしれない。カリーナ曰く、最近のサンパウロ和食屋さんではテーブルに醤油の壷がどんと置かれ、とにかく何にでもこれをかけて食べるらしい。しかもニッポンのさらさらした醤油と違い、甘くて濃厚なまるでソースのような醤油だとか。

さて、彼女たちが寿司と同じくらい好きなもの、それが「SAKE」つまり「日本酒」である。和食屋や寿司屋へ行ったら必ず日本酒を飲むらしい。「アルコール度が低くて女性向きなのよ。甘くて美味しいし、お米から出来ているっていうのが何となくヘルシーよね。」「SAKEを使ったカクテルがすごい人気でね、クラブやディスコへ行くと女の子はみんなそれを飲んでる」へぇぇ。SAKEカクテルですか。

ブラジルのカクテルとして知られるのが「カシャーサさとうきび蒸留酒)」を使った「カピリーニャ」。潰したライムを汁ごとグラスに入れ、そこにカシャーサを注ぐ。もはや国際的に有名なこの飲み方は、当然イタリアでもポピュラーで、ライム味だけでなく、イチゴ味やらレモン味やらいろいろバージョンがある。
ただカシャーサは40度前後もある強いリキュールであり、飲みすぎると悪酔いすること間違いない。このカシャーサの替わりに「SAKE」を入れて作るのが「サケリーニャ」で、カリーナ曰く「もはやオリジナルのカピリーニャより、大人気」らしい。(※保守的なイタリアにこのサケリーニャはまだ到達していない)

我々の知らないところで、酒がこのような進化を遂げているとは、驚きである。

評判のジェラッテリア@ペルージャ

先日のコメント欄でジェラートの話が出たということで、今日はペルージャでわたくしが一番好きなジェラッテリアをご紹介。チェントロの11月4日広場に面した最高のロケーションで、知らない人はいない。その名も「LA FONTE MAGGIORE(ラ・フォンテ・マッジョーレ)」。pescaさんご推薦の大学前のジェラッテリアとはまた別なのだが、どちらもペルージャの超人気店だ。

店先には「YOGURTERIA(ヨーグルテリア)」と看板が出ており、確かにヨーグルトもおいているのだが如何せんジェラートが美味しいということで、ジェラッテリアとして有名である。ちなみにヨーグルテリアとは(これがまた結構イタリアには存在するのだ)、好きなヨーグルトとトッピングを選ぶというなかなか楽しいかつヘルシーな店のこと。個人的にはヨーグルテリアにあるフローズンヨーグルトが、時折むしょうに食べたくなる。




話を戻そう。ラ・フォンテ・マジョーレには常時25種類くらいのジェラートがある。この中から2種類を選ぶ(イタリアのジェラートは2種盛りが普通である)ことがどれほど難しいか。毎度毎度よくこれだけ悩めるなというくらい、わたくしはいつもショーケースの前に立ち尽くす。いや、典型的なA型、優柔不断なわたくしにとってかなりの決断力を要する瞬間である。

2種盛り合わせ、ということはその2種類が混ざる部分があるということだ。この混ざった部分をいかに美味しくできるかが成功へのポイント(←もはや勝負の域)である。つまり、混ぜても美味しい、相性のよい2種を選ぶ必要があるわけだ。そんなことを真剣に考え出している時点で、既にイタリアンジェラートに犯されているのだろう。しかも散々悩んだ挙句、選ぶのはいつも同じようなものばかり。人生は大きく右へ左へとそれているというのに、ジェラートの選択に限っては平凡の枠を出られないのである。

やっぱり外せないのがチョコレート系。通常タイプから、チョコチップ入りのもの、チョコレートムース・・・とチョコレートだけでバリエーションは豊富である。チョコレート系を選んだら、もう1種は大抵バナナかピスタチオ、もしくは生クリーム。ただしこの濃厚コンビで攻めることができるのは、やっぱりお腹に余裕があるときだけで、さすがに夕飯の直後や飲んだ後はさっぱり派へと流れてしまう。そう、レモンやメロン等のシャーベットの登場である。この場合合わせるのはヨーグルトもしくはラッテ(牛乳)。何でいつもこんな普通なセレクトしかできないのか・・・情けなや。

※ちなみに。冬のお勧め、ラ・フォンテ・マジョーレのチョコラータ・カルダ(=ホットチョコレート)も是非お試しください。たっぷりの生クリームが盛られた濃厚でトロトロ感たっぷりのチョコラータ・カルダは芯から体を温めてくれます。

クーラーのない夏

L'ESTATE A PERUGIA SENZA L'ARIA CONDIZIONATA

もはや有り得ない。東京の生活からクーラーを除外するなど。しかし思えばペルージャでの約3年、夏といえどクーラーの姿はなかった。まずクーラー付きの家というものを殆ど見たことがない。だから東京でも我慢しなくては、というのではない。そもそも気候が全く違うのだから。四季があるのは同じでも、カラッとした地中海性気候の上、山間都市であるペルージャはローマやフィレンツェボローニャなどよりも間違いなく過ごしやすい。軽井沢のような日中の涼しさはないが、それでも朝晩は気温が下がって気持ちの良い風がそよぎ、暑くて寝苦しい夜など記憶にないのだから、東京の気候とはかけ離れている。

例えば築何百年の家。暑さを回避するために「風通しのよさ」が重視されている。家中のドアと窓を開ければ、スーッと風が通る仕組みになっている。イタリア語では「CORRENTE D'ARIA(コレンテ・ディ・アーリア)」と言われるこの「風通し」、今でもペルージャのような田舎街では大切な夏の要素である。チェントロにはまだまだ石作りの家も多いため、家の中へ一歩入るとひんやり涼を感じる、ということも少なくない。

バール・アルベルトで仕事をしていると、カウンターにやってくる自堕落な常連たちが夏の暑さに不満を並べ立てる。「もうやってらんないよ、この暑さじゃ何にもできない。」「10年前のペルージャはよかったよ、もっと涼しかった。」「だよな。最近めっきり湿度が高くなって。体に悪いことこのうえないよ。」「環境破壊だよ。都市化が進んでるから」暑かろうが湿度が高かろうが、涼しかろうが雪が降ろうが、天候に左右されることなく仕事をしないのがアンタたち。そういう奴に限って己の非業を天候のせいにするものである。さらに、ペルージャくらいで都市化発言が出るとは全くもって驚きである。

バール・アルベルト自体は古い石作りであるため、店内は比較的ひんやりしている。勿論冷房などないが、まあ耐えられる暑さである。ただし。わたくしが日中スタンバイしていなくてはならない場所は、バールのカウンター内、つまりカフェ・マシーンの前である。このカフェ・マシーン、常に稼動していて熱を発するため、背中が燃えるように熱く、逆に言うとその暑さだけがわたくしの夏の思い出である。

燃える背中を冷やすため、客がいないのを見計らって外の店前テラス席へと逃げ、大きなカサの下、日陰に身を寄せる。そして客がやってくるのを見るや否や、店の中へ舞い戻る。そういえばこの行動が、常連のバカの1人に告げ口されたことがある。「マリコはいつも外にいてちゃんと店番をしていないようだ」と、そいつはこっそり店主アルベルトに言い放ち(どうせゲームの換金をやってあげなかったとか、ウイスキーを多めにいれてやらなかったとか、そういったことの逆恨みである)、アルベルトが困った顔をしていたのを思い出す。いつも外にいたわけじゃあるまいし。誰かと違って仕事は全部やっていたのだから、文句を言われる筋合いはないのだが、「あからさまな”告げ口”」はイタリアの田舎町では日常茶飯事なのだ。

♪夏がくれば思い出す♪わたくしの場合、こんな日常の些細なことばかりである。

卵サンドにモルタデッラを入れて何が悪い!

barmariko2006-07-12


モルタデッラとはとどのつまりイタリアのソーセージハム。ピスタチオ入りのものや黒胡椒入りのものなどがポピュラーで、イタリア人も大好きなハムである。中部イタリアの食の都ボローニャが発祥と言われ、今でも現地のトラットリアやリストランテでは、うず高く盛られたモルタデッラの一皿をこれでもかというくらい食すことができる。勿論もはやイタリア全土で食べられるが、やはりボローニャのそれは一味も二味も違う。

このモルタデッラ、実はニッポンでお馴染みの卵サンドに入れると超贅沢な美味しさなのだ。サンドイッチの具としてもはや右に出るものはいない、ゆで卵にマヨネーズの組み合わせ。この素朴な味わいに、ニッポンで食べれば高級な食材に入るであろうこのモルタデッラを惜し気もなく合わせる。その贅沢感にしばし酔いしれるわたくし。(←ていうか人間小さい)そしてこの感傷から一気に目覚める時がやってきたのである。

バール・アルベルトで以前、あまりにカラッポなパニーノのショーケースと店主アルベルトの脳みそにうんざりして、「あんたが仕入れをしないならあたしが作ってやるよ!」と一発奮起したことがあった。
パニーノ大作戦(前編)
パニーノ大作戦(中編)
パニーノ大作戦(やや後編)
パニーノ大作戦(後編)〜アンタにはうんざり!

その時作った数種類のパニーノの中に、ニッポンジンであるわたくしは当然ながらこの日伊合作、モルタデッラ入り卵サンドを入れた。ニッポンジン留学生も多いし、アメリカ人やらブラジル人やらとにかく外国人がいっぱいいるわけだから、問題なく受け入れられるだろうと思ったのだ。実際美味しいんだから、ともすれば流行るかも!?くらいに考えていた。

1人目:「美味い!」、2人目:「懐かしい!」、3人目:「美味い!」。そして4人目:「マンマ・ミーア!(何てことだ!)モルタデッラに卵を合わせるなんてキチガイ沙汰だ!」こんな発言をしやがった4人目の男こそ、バール・アルベルトの影の主、スーパーヘビー顧客である50歳イタリア人、フランチェスコ(写真)。

根はいい奴なのだが、アルベルトの親父の代から店に出入りしている為、少々態度がデカイ。職業は一応アンティークショップのオーナー。こう書くと聞こえがいいが、ショップというより5坪程のガラクタ倉庫である。掘り返すと戦中の誰のものか分からない葉書や白黒写真、学校の通信簿まで出てくる始末。店(倉庫?)は常に閉まっており、こう張り紙がされている。「入りたかったら、携帯にTELして。すぐ開けに来ます」まあ大体、100m先のバール・アルベルトで一日中暇を潰しているわけだから問題ない。

話を戻そう。フランチェスコはこう言った。「ただのモルタデッラ入りパニーノだと思ったから食べたんだ。なんてこった、卵を合わせるなんて!モルタデッラは重いんだ、豚の背脂が入っているんだから。そこに卵を入れるなんて、ありえない。重いものに重いものを合わせるのか??今日は胃が重くてきっと寝られないよ。」「あら、そう。でもアンタの前に3人のお客さんが食べてくれてね、みんな美味しいって言ってたよ。」「外国人だろ?」「一番最初に食べてくれたのは、シモーネのタバコ屋で働いているイタリア人の女の子だよ。ていうかさ、好みだよ、こんなの。」悔しくて反撃するわたくしも大人気なかったに違いない。

重い重いって、アンタすでに太りまくりじゃないか。モルタデッラと卵の組み合わせくらいでそれだけ神経質になるなら、毎日昼から飲んでる酒をちったぁ控えなさいよ。

その後やってきたのが隣町アッシジでワイン園を経営するアントニオ。古くからアルベルトの友人である。「マンマ・ミーア!なんてこった、今日は何が起こったんだい?ショーケースにパニーノが溢れてるよ。まいったな。」「作ったのよ、アルベルトが仕入れてくれないから。」「ブラバー!それじゃ1つ頂くよ。ツナ入りがいいな。」

笑顔で食べてそれで終わりかと思いきや・・・「美味しかったよ、ありがとう。ただ1ついいかな?このツナサンドに君はケッパーを入れただろう?これはやめたほうがいいかもしれないよ。」「何で?ツナにケッパーは王道でしょ?」「勿論そうさ。ただ組み合わせとしてはちょっと南部っぽいというか・・・南イタリアでは当たり前のようにこうやって食べるけどね、やはり中部以北では苦手と思う人もいるんだよ。ちょっとリスキーだから、やめたほうが無難じゃないか?」

あんたら、うるさいよ。